本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


「ただいまです」
「お帰りなさい。夕飯できてるよ」
「今日も美味そう!ありがとうございます!」
「カナちゃんにもご飯あげてるから安心して」
「カナのこともありがとうございました。いい子にしてました?」
「もうすっごくいい子」


 カナちゃんは本当に私に懐いてくれたようで、料理中ですら構って欲しそうにくっついてきた。
 かわいかったけどちょっと困っちゃったな。


「ところで李愛さん、明日出勤できますか?」
「うん、財布の中に社員証入れてたし最低限のものはあるから何とか……」


 服や化粧品、バッグといったものは書い直すことになったけれど。
 何しろ財布とスマホ以外何もなかったから。


「よかった。ちょっと頼みたいことがあって」
「頼みたいこと?」
「明日行けばわかりますよ」


 そう言って鷹宮くんは、悪戯を企てている子どもみたいに笑っていた。


 * * *


 翌日、出勤したらすぐに上司に呼ばれた。
 そして私がTMホールディングスグループの専任サポートに選ばれたことを聞いた。

 私は自分の耳を疑った。
 TMホールディングスといえば、知らない者はいない大手企業。様々な事業を手がける国内有数の大企業だ。


「その担当を鷹宮くんが担うことになったから、サポートを糸金にお願いしたいんだ」
「私がですか?」


 きっと昨日言っていたことはこのことだろう。だが、こんなに大事だとは想定外だった。
 まさかTMの選任サポートを私がするだなんて。


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