本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。
* * *
私は鷹宮くんが運転する車の中で緊張していた。他社に挨拶に行くとわかっていれば、もう少し良い服を買ったのに。変じゃないといいな。
「着きました」
「あ、もう着いたの……えっ!?」
「さあ、行きましょう」
「ちょ、ちょっと待って!?」
鷹宮くんの運転する車で到着した場所は、TMホールディングス本社ではなかった。
そのグループ会社――ホークエージェンシーの入っているオフィスビルだったのだ。
「ど、どういうこと!?」
「李愛さん、俺に全部任せてください。あなたはただ俺の隣にいてくれるだけで大丈夫です」
何が何だか全くわからなかった。
もし真潮に会ってしまったら……どうすれば良いのだろう?
鷹宮くんにはどんな思惑があるのだろう?
頭が混乱したまま、彼の言われるがままついて行くしかなかった。
「おーい!嗣実!」
ホークエージェンシーのオフィスが入っているフロアまで上がると、エレベーターを降りたところで五十代くらいと思われるスーツ姿の男性が待っていた。
鷹宮くんを下の名前で親しそうに呼んでいる。