本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。
本当はもっと文句を言ってやりたいと思ったけれど、今の情けない真潮を見ていたらもう何も言うことはないと思ってしまった。
後は然るべき処罰が下るのだろう。
こうして私と真潮の関係は終わった。
四年に渡る交際は決して短く浅いものではなかったからこそ、こんな風に幕を閉じるのはやるせない。
たくさん傷つけられたけれど、それでも私は前を向いて進んで行く。
「李愛さん、お疲れ様でした」
「鷹宮くん、ありがとう」
こんな風に前向きな気持ちになれるのは、きっと彼のおかげだ。
「色々驚くことばかりだったけど」
「それはまた追々話します。俺もホッとしてます。後は鶴谷部長に任せておけば大丈夫ですよ」
「本当にありがとう」
鶴谷部長にも改めてご挨拶をさせていただきたいと思った。
「李愛さん、今の気分はどうですか?」
「スッキリした、とは違うんだけどなんて言うのかな。重い足枷が外れたみたい。今はすごく気持ちが軽いの」
「よかったです。これで俺ももっと本気出せますね」
「え?」
――ちゅ。
唇に柔らかいものが押し当てられた。ほんの一瞬ですぐに離れたけど、この感覚は二度目だった。
「――えっ!?」
「李愛さん、これからは俺のことだけ考えて」
こつん、と私の額に鷹宮くんの額が当たる。
あまりにもゼロ距離に悪戯じみた、そしてどこか獣じみた笑みを浮かべる鷹宮くんの綺麗な顔がある。
やばい、と反射的に思った。
多分だけど、私はもう彼から逃げられそうにないと本能的に悟った。