本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


 不満がないと言えば嘘になる。
 家にいても真潮はあんまり私と会話してくれない。

 同棲し始めた頃はこんなんじゃなかったのに。
 恋人っぽいことも全然してないな……。


「そういえばさ、李愛。俺のワイシャツクリーニング出してくれた?」
「え、あ、まだ……」
「まだ?明日大事なプレゼンあるって言ったよな?」


 明らかに真潮の声から苛立ちが窺える。


「でも、ワイシャツなら他にもあるよ。先週出したから綺麗なものもあるでしょ?」
「あれじゃないとダメなんだよ!!スーツに合うワイシャツってあるだろ?いつも好きな私服着てる李愛にはわからないと思うけど」
「っ、」
「あーあ、どうしてくれんだよ。テンション下がるわ」
「…………」


 私だって忙しいのに。平日はなかなか時間取れないから前もって言って、って言ったのに直前になって頼んだのは真潮だ。
 だけど文句の一つも言えない。


「ごめんね」
「全くだよ。ほんと使えねえ」
「…………」


 真潮は自分の思い通りにいかないとすぐにイライラする。
 些細なことでも自分の計画から狂うことをとても嫌う。
 そのくせ自分都合で急に予定を変えたりする。


「ごちそうさま」


 真潮はテーブルに食器を置きっぱなしにしたまま、席を立った。ソファにドカッと座り、またスマホをいじる。
 片付けをするのも私の仕事なのだ。

 溜息をつきながら、それでも私は何も言えなかった。


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