本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。
予期せぬタイミングで自分の名前が呼ばれ、思わず心臓が飛び出るかと思った。
気づかれないように聞き耳を立てれば、恐らく営業部の若い男性社員が話しているようだ。
「しかもあの人、毎回オウルのミルクキャンディくれない?」
「わかる、いっつもくれるよな。なんか昼飯抜いてたりするといつもお菓子くれない?」
「俺ももらった!なんつーか糸金さんめっちゃ良い人なんだけど、オカンみたいだよな」
オカンみたい。
その言葉が私に重くのしかかる。
「あーね。美人な方だと思うけどなんか地味だし。世話焼きっぽいところがめっちゃオカン」
「面倒見良いんだけどな、そこがオカンなんだよな」
多分この人たちは決して貶しているわけではない、のだと思う。但し褒めてもいない。
オカンみたい、か……。
全身に巨石がのしかかったみたいに気が重たくなった。
はっきり言ってかなりショックだった。
だって世話焼きのオカンって、要するにオバサンっぽいってことでしょう?
私はトボトボと給湯室を通り過ぎ、窓ガラスに映った自分の顔を見た。
薄化粧でパッとしない顔、適当に結いた髪。うん、我ながらなんて地味なのだろう。
私に魅力がないから、真潮は冷たいのかな。
私がもう少し頑張って自分磨きしたら、真潮も優しくしてくれるのだろうか。