不器用な生徒会長に初めての恋をした
*
「あーかりっ」
「ゆめ、お疲れ」
明るくて天真爛漫な私の親友、田部ゆめ。ポニーテールを揺らしながら私のところへ駆けてきた。
ゆめは男子からも女子からも人気で、私とは比べ物にならないくらい素敵な人だ。
「朱里さぁ、生徒会入ったってほんと?」
「ほんとだよ。しかも副生徒会長」
「えぇ、まじで!? すごいじゃん、さすが朱里」
ぱちぱち拍手させながら朱里はそう言う。褒められるのは嬉しいけれど、少し照れくさい。
「ゆめも入らない? まだ部員募集中なんだけど」
「んーあたしは遠慮しておくよ。まとめるの苦手だからさっ」
「そっかー、合川先輩が誘ってくれるの待つしかないか」
独り言のように発したあと、ゆめの耳がぴくっと震わせた。
何だろう、と思いながらゆめの方を見ると何故かおっかない顔をしている。
「……合川先輩って、あの合川健さん?」
「ゆめ、合川先輩のこと知ってるの?」
「有名だよっ、何か中学の頃ヤンキーだったって噂広まってるよ! それにしても、あの人生徒会入ってるの!?」
「ふーん、そうなんだ。合川先輩、生徒会長だよ」
「生徒会長!?」
二度驚いていた。ゆめには適当な相槌をしたものの、合川先輩がヤンキーだったのは驚きだ。といっても、噂でしかないのだから真実は分からないけれど。
だからヤンキー座りをしていたのか、と納得がいく。
「それにしても怖いねぇ。朱里気をつけてね、合川先輩に何されるか分かんないよ」
「……うん」
頷くことしかできなかった。ゆめだとしても、不思議なことに合川先輩のことを悪く言われるのは胸がチクチクと傷んだ。
「そんなことよりさ。ゆめ、最近彼氏とはどうなの?」
「あたし〜? んーとね、最近初めてキスしたのっ」
「うわぁ……すごいね、青春だ」
これ以上合川先輩の話はしたくなかったので、私は話を切り替えた。ゆめには同い年の違うクラスに彼氏がいるらしい。
周りは恋人がいるという子が多くて、何だか憧れてしまう。人を好きになったこともない私は置いてけぼりだ。
「朱里も早く彼氏作りなよー、紹介もするし!」
「ん、ありがとう。ゆめもお幸せにね」
また明日ーと言いながら私達は帰った。そのときに合川先輩の冷たい表情が、何故か思い浮かんだ。
*
「だからここはこうだと言っているだろ!」
「だって分からないんだもん、仕方ないじゃないですか……!」
部活動案内のチラシを作りながら、私はそう言った。パソコンに慣れていないため、設計をするのが難しい。今は何度も先輩に聞いたから怒られているところだ。
「いいか、もう最後だぞ。ここはこうやってレイアウトを入れて、大きく見出しを書いて」
合川先輩の凛々しい顔が、私の顔と数センチメートルの距離になる。
「……っ! せ、先輩、近いです」
「え? あ、あぁ、悪い」
いつもは全く謝らない先輩が、今日は珍しく謝った。私はそのことに驚きだ。先輩でもこういう照れた表情をするんだ……と親近感が湧く。
「い、いつまで見てるんだ」
「あっ、ごめんなさい!」
恥ずかしさを誤魔化すように、私はパソコンで文字を打つ。先程の先輩の言葉をしっかり聞いていたため、スラスラと打つことができた。
よし、この辺でいいかな。
「先輩、できました! 見てください」
合川先輩は何も返事をせず、私のパソコンの画面を上から下までジロジロ見ていた。怒らせないように先輩の機嫌を伺う。
「せ、先輩、どうですか?」
「……最初にしては、よく出来てる。お疲れ」
一瞬笑みを浮かべた先輩を見て、私も思わず微笑んでしまう。先輩は怖いはずなのにこんなにも嬉しいだなんて、どうかしている。
「あーかりっ」
「ゆめ、お疲れ」
明るくて天真爛漫な私の親友、田部ゆめ。ポニーテールを揺らしながら私のところへ駆けてきた。
ゆめは男子からも女子からも人気で、私とは比べ物にならないくらい素敵な人だ。
「朱里さぁ、生徒会入ったってほんと?」
「ほんとだよ。しかも副生徒会長」
「えぇ、まじで!? すごいじゃん、さすが朱里」
ぱちぱち拍手させながら朱里はそう言う。褒められるのは嬉しいけれど、少し照れくさい。
「ゆめも入らない? まだ部員募集中なんだけど」
「んーあたしは遠慮しておくよ。まとめるの苦手だからさっ」
「そっかー、合川先輩が誘ってくれるの待つしかないか」
独り言のように発したあと、ゆめの耳がぴくっと震わせた。
何だろう、と思いながらゆめの方を見ると何故かおっかない顔をしている。
「……合川先輩って、あの合川健さん?」
「ゆめ、合川先輩のこと知ってるの?」
「有名だよっ、何か中学の頃ヤンキーだったって噂広まってるよ! それにしても、あの人生徒会入ってるの!?」
「ふーん、そうなんだ。合川先輩、生徒会長だよ」
「生徒会長!?」
二度驚いていた。ゆめには適当な相槌をしたものの、合川先輩がヤンキーだったのは驚きだ。といっても、噂でしかないのだから真実は分からないけれど。
だからヤンキー座りをしていたのか、と納得がいく。
「それにしても怖いねぇ。朱里気をつけてね、合川先輩に何されるか分かんないよ」
「……うん」
頷くことしかできなかった。ゆめだとしても、不思議なことに合川先輩のことを悪く言われるのは胸がチクチクと傷んだ。
「そんなことよりさ。ゆめ、最近彼氏とはどうなの?」
「あたし〜? んーとね、最近初めてキスしたのっ」
「うわぁ……すごいね、青春だ」
これ以上合川先輩の話はしたくなかったので、私は話を切り替えた。ゆめには同い年の違うクラスに彼氏がいるらしい。
周りは恋人がいるという子が多くて、何だか憧れてしまう。人を好きになったこともない私は置いてけぼりだ。
「朱里も早く彼氏作りなよー、紹介もするし!」
「ん、ありがとう。ゆめもお幸せにね」
また明日ーと言いながら私達は帰った。そのときに合川先輩の冷たい表情が、何故か思い浮かんだ。
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「だからここはこうだと言っているだろ!」
「だって分からないんだもん、仕方ないじゃないですか……!」
部活動案内のチラシを作りながら、私はそう言った。パソコンに慣れていないため、設計をするのが難しい。今は何度も先輩に聞いたから怒られているところだ。
「いいか、もう最後だぞ。ここはこうやってレイアウトを入れて、大きく見出しを書いて」
合川先輩の凛々しい顔が、私の顔と数センチメートルの距離になる。
「……っ! せ、先輩、近いです」
「え? あ、あぁ、悪い」
いつもは全く謝らない先輩が、今日は珍しく謝った。私はそのことに驚きだ。先輩でもこういう照れた表情をするんだ……と親近感が湧く。
「い、いつまで見てるんだ」
「あっ、ごめんなさい!」
恥ずかしさを誤魔化すように、私はパソコンで文字を打つ。先程の先輩の言葉をしっかり聞いていたため、スラスラと打つことができた。
よし、この辺でいいかな。
「先輩、できました! 見てください」
合川先輩は何も返事をせず、私のパソコンの画面を上から下までジロジロ見ていた。怒らせないように先輩の機嫌を伺う。
「せ、先輩、どうですか?」
「……最初にしては、よく出来てる。お疲れ」
一瞬笑みを浮かべた先輩を見て、私も思わず微笑んでしまう。先輩は怖いはずなのにこんなにも嬉しいだなんて、どうかしている。