不器用な生徒会長に初めての恋をした
*
「ふあぁぁ……」
私は小さくあくびをし、背伸びをした。パソコンをずっと打っているとやはり肩が凝る。
合川先輩は用事があると言って先に帰ってしまった。私もそろそろ帰ってもいいかなぁ。
「じゃあ、お疲れ様です」
誰もいない生徒会室に挨拶をし、私は昇降口へと向かった。
もう日が落ちてきていて、そろそろ夜が来る。私は夜が苦手だ。暗闇に呑まれてしまいそうで怖くなってしまうから。なんて、子供みたいな理由だが。
「にゃーお」
しばらく帰り道を歩いていると、猫の声が聞こえた。すると誰かが段ボール箱に入った猫に餌を与えているみたいだ。
素敵な人なんだろうなぁ。
「よし、いい子だ。じゃあまた明日来るからな」
え、と思わず声が出てしまった。だって予想もしない人物だったから。
「あ、合川、先輩?」
「……あんた、何でここに?」
私のことをあんたと呼ぶその男性は、合川先輩だった。
合川先輩がどうして捨て猫に餌やりをしているんだろう……?
「私、家がここら辺なので」
「そうか。いや、今見たことは忘れてくれ」
「えっ?」
「ダサいだろう、男が猫に餌あげてるとか」
合川先輩の顔がみるみる赤くなっているのが言われなくても分かる。けれど私は、「そんなことないです」と反論した。
「先輩いい人なんだなって、思いましたもん」
「……普段は悪い人なのか」
「はい」
素直に答えると先輩は動揺していた。普段、先輩が嫌な性格なのは事実だろう。
「とにかく、あんたと俺の秘密!! じゃあな!!」
全く、恥ずかしがり屋だなぁと呆れる。
けれど “私と先輩の秘密” と言われて、何故か胸がドキドキと締め付けられる感覚があった。
*
「えぇ、それって恋だよ」
「こっ、こここ恋!?」
「そうだよー、そっかぁ、やっと朱里にも好きな人ができたんだねぇ」
ニヤニヤしながら私を見る。ゆめに相談した私が間違っていたのだろう。
だって、先輩に恋してるだなんて信じられないから――。
「んー、でも合川先輩って元ヤンって噂あるじゃん? 見た目も怖いし。あんな先輩のどこがいいの?」
「せ、先輩のこと悪く言わないで……! 素敵な人、なんだからっ」
反論してしまってからハッ、と気がつく。どうして私、先輩の悪口を言われていただけでこんなにも悔しいんだろう。
先輩のいいところを何も知らない親友に悪く言われて、なぜ私が怒っているの――?
「ほらね、やっぱり好きなんじゃん」
「……っ!」
やられた。ゆめ、わざと私を怒らせたんだ。
えへ、とふざけで笑うゆめを殴りたくなる。
「ふふ、そっかそっか。朱里に好きな人ねぇ……。私、応援するから」
ぎゅっ、と強く方を握りしめられた。心強い親友を持ったなぁ、と嬉しくなる。
――私、合川先輩のことが好きなんだ。
*
「あんた、さっきからどうした? 何かぼーっとしてるぞ」
先輩のことを好きだと知った次の日。何だか意識するようになってしまった。
先輩を目の前にすると、緊張で胸が張り裂けそうだ。
「す、すみません」
「気合ないなら帰れ」
先輩の冷たい言葉が心に刺さる。何でこんなに嫌な性格な人を好きになってしまったんだろうと思う。
「すみませ――」
「あと、具合悪いなら言え。俺が心配するだろ」
ぶっきらぼうに先輩はそう言った。
先輩、私のことを心配してくれてたんだ……。
「ありがとう、ございます」
「いや、礼はいい。昨日の猫のことの口止め料だ」
「あはは、ほんとに嫌なんですね。変なことじゃないのに」
「俺みたいな性格の男が猫に餌をやってるなんて変だろう」
先輩はきっと、思ったことを素直に口にすることが苦手なのだろう。そういうところがかわいいし、好きなんだ――。
「ふあぁぁ……」
私は小さくあくびをし、背伸びをした。パソコンをずっと打っているとやはり肩が凝る。
合川先輩は用事があると言って先に帰ってしまった。私もそろそろ帰ってもいいかなぁ。
「じゃあ、お疲れ様です」
誰もいない生徒会室に挨拶をし、私は昇降口へと向かった。
もう日が落ちてきていて、そろそろ夜が来る。私は夜が苦手だ。暗闇に呑まれてしまいそうで怖くなってしまうから。なんて、子供みたいな理由だが。
「にゃーお」
しばらく帰り道を歩いていると、猫の声が聞こえた。すると誰かが段ボール箱に入った猫に餌を与えているみたいだ。
素敵な人なんだろうなぁ。
「よし、いい子だ。じゃあまた明日来るからな」
え、と思わず声が出てしまった。だって予想もしない人物だったから。
「あ、合川、先輩?」
「……あんた、何でここに?」
私のことをあんたと呼ぶその男性は、合川先輩だった。
合川先輩がどうして捨て猫に餌やりをしているんだろう……?
「私、家がここら辺なので」
「そうか。いや、今見たことは忘れてくれ」
「えっ?」
「ダサいだろう、男が猫に餌あげてるとか」
合川先輩の顔がみるみる赤くなっているのが言われなくても分かる。けれど私は、「そんなことないです」と反論した。
「先輩いい人なんだなって、思いましたもん」
「……普段は悪い人なのか」
「はい」
素直に答えると先輩は動揺していた。普段、先輩が嫌な性格なのは事実だろう。
「とにかく、あんたと俺の秘密!! じゃあな!!」
全く、恥ずかしがり屋だなぁと呆れる。
けれど “私と先輩の秘密” と言われて、何故か胸がドキドキと締め付けられる感覚があった。
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「えぇ、それって恋だよ」
「こっ、こここ恋!?」
「そうだよー、そっかぁ、やっと朱里にも好きな人ができたんだねぇ」
ニヤニヤしながら私を見る。ゆめに相談した私が間違っていたのだろう。
だって、先輩に恋してるだなんて信じられないから――。
「んー、でも合川先輩って元ヤンって噂あるじゃん? 見た目も怖いし。あんな先輩のどこがいいの?」
「せ、先輩のこと悪く言わないで……! 素敵な人、なんだからっ」
反論してしまってからハッ、と気がつく。どうして私、先輩の悪口を言われていただけでこんなにも悔しいんだろう。
先輩のいいところを何も知らない親友に悪く言われて、なぜ私が怒っているの――?
「ほらね、やっぱり好きなんじゃん」
「……っ!」
やられた。ゆめ、わざと私を怒らせたんだ。
えへ、とふざけで笑うゆめを殴りたくなる。
「ふふ、そっかそっか。朱里に好きな人ねぇ……。私、応援するから」
ぎゅっ、と強く方を握りしめられた。心強い親友を持ったなぁ、と嬉しくなる。
――私、合川先輩のことが好きなんだ。
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「あんた、さっきからどうした? 何かぼーっとしてるぞ」
先輩のことを好きだと知った次の日。何だか意識するようになってしまった。
先輩を目の前にすると、緊張で胸が張り裂けそうだ。
「す、すみません」
「気合ないなら帰れ」
先輩の冷たい言葉が心に刺さる。何でこんなに嫌な性格な人を好きになってしまったんだろうと思う。
「すみませ――」
「あと、具合悪いなら言え。俺が心配するだろ」
ぶっきらぼうに先輩はそう言った。
先輩、私のことを心配してくれてたんだ……。
「ありがとう、ございます」
「いや、礼はいい。昨日の猫のことの口止め料だ」
「あはは、ほんとに嫌なんですね。変なことじゃないのに」
「俺みたいな性格の男が猫に餌をやってるなんて変だろう」
先輩はきっと、思ったことを素直に口にすることが苦手なのだろう。そういうところがかわいいし、好きなんだ――。