不器用な生徒会長に初めての恋をした
*
いつもと同じ放課後、私は生徒会室へと足を運んだ。最初はあまり乗り気ではなかったけれど、今となってはやってよかったと思っている。先輩に、出会えたから。
ガラガラとドアが開く音がして、私はぱっと振り向く。
「わ、あなたが朱里ちゃん?」
合川先輩じゃない、女性が入ってきた。
目がくりくりとしたお人形さんみたいな女の人で、背中まであるウェーブ巻きした髪がとても似合っている。
そもそも何で私の名前を――?
「え、えっと……」
「あっ、自己紹介まだだったね! 初めまして、三年の鈴沢 菜穂です。健が紹介してくれて生徒会に入ることにしたの」
にっこりと笑いながら、鈴沢先輩はそう言った。とても可愛らしい人だ。
そう思うと同時に、合川先輩の名前を呼び捨てにしていることが気になった。
「鈴沢先輩、よろしくお願いします」
「いーよいーよ、敬語苦手だからさ、タメ口で話して! それに菜穂でいいよ」
鈴沢先輩――菜穂先輩の笑顔は太陽みたいに眩しくて、とても素敵な人だ。
それにフレンドリーで話しやすい。
「えっと、うん。菜穂先輩、これからよろしくね」
「うんうんよろしく! ねぇねぇ、早速なんだけど、朱里ちゃんは健のこと好きだったりする?」
私は驚きのあまり口元を手で隠しながら、首を横に振った。
菜穂先輩に嘘を吐くことになるけれど、この場合は仕方がない。
「そっかぁ、良かった」
「……えっ?」
「私、健の幼馴染なの。それで健のことが好きなんだっ」
頭の中が真っ白になった。
菜穂先輩も、合川先輩のことが好き――?
「でさー、健のこと協力してくれないかな? お願い、朱里ちゃん」
菜穂先輩は両手を合わせて、私にそう言ってきた。本当は協力なんかしたくない。だって私も、合川先輩のことが好きなのだから。
けれど嘘を吐いたのは私だから、頷くしかなかった。
「うん、協力する」
「やったぁ! ありがとう、朱里ちゃん!」
あぁ、目眩がする。
私、合川先輩のことこれからも好きでいていいのかな――?
*
「えぇ、頷いちゃったの!?」
「うん、だってしょうがないじゃん。そうするしかなかったんだもん」
「でもさ、鈴沢先輩って有名だよ? 学年一美人で勉強もスポーツも完璧、って」
ゆめにそう言われ、喉に言葉が詰まる。確かに菜穂先輩は太陽のような明るい存在。
そういえば、と何か言いかけていた。
「鈴沢先輩、何か裏の顔があるって噂が」
「裏?」
「んー、何か女子の陰口言ったり家で暴言吐いてるとか。まぁ知らないけどね」
あんなに素敵な菜穂先輩がそういうことを言うなんて信じられない。噂なんて嘘だろう。
「それは置いといて、協力する気はないんでしょ?」
「まぁ、したくはないけど……。合川先輩と菜穂先輩、正直お似合いだとは思う」
「それでいいの? 朱里の初恋なんだよ?」
そう、菜穂先輩には勝てる見込みなんかない。
でも、それでも――。
「負けないから。合川先輩のこと、絶対好きにさせてみせる」
拳を握りしめながら、私はそう言った。ゆめに言われた通り、これは初恋なんだ。絶対に諦めたくはない。
「……朱里、かわいいね」
「えっ? ゆめ、急にどうしたの」
「恋する女の子ってほんとにかわいい! 応援するからね」
それはゆめもでしょ……と心のなかでツッコミを入れる。けれど親友に応援されることはとても嬉しいことだ。私は素直に「ありがと」と言う。
負けない。私、菜穂先輩に負けない――。
いつもと同じ放課後、私は生徒会室へと足を運んだ。最初はあまり乗り気ではなかったけれど、今となってはやってよかったと思っている。先輩に、出会えたから。
ガラガラとドアが開く音がして、私はぱっと振り向く。
「わ、あなたが朱里ちゃん?」
合川先輩じゃない、女性が入ってきた。
目がくりくりとしたお人形さんみたいな女の人で、背中まであるウェーブ巻きした髪がとても似合っている。
そもそも何で私の名前を――?
「え、えっと……」
「あっ、自己紹介まだだったね! 初めまして、三年の鈴沢 菜穂です。健が紹介してくれて生徒会に入ることにしたの」
にっこりと笑いながら、鈴沢先輩はそう言った。とても可愛らしい人だ。
そう思うと同時に、合川先輩の名前を呼び捨てにしていることが気になった。
「鈴沢先輩、よろしくお願いします」
「いーよいーよ、敬語苦手だからさ、タメ口で話して! それに菜穂でいいよ」
鈴沢先輩――菜穂先輩の笑顔は太陽みたいに眩しくて、とても素敵な人だ。
それにフレンドリーで話しやすい。
「えっと、うん。菜穂先輩、これからよろしくね」
「うんうんよろしく! ねぇねぇ、早速なんだけど、朱里ちゃんは健のこと好きだったりする?」
私は驚きのあまり口元を手で隠しながら、首を横に振った。
菜穂先輩に嘘を吐くことになるけれど、この場合は仕方がない。
「そっかぁ、良かった」
「……えっ?」
「私、健の幼馴染なの。それで健のことが好きなんだっ」
頭の中が真っ白になった。
菜穂先輩も、合川先輩のことが好き――?
「でさー、健のこと協力してくれないかな? お願い、朱里ちゃん」
菜穂先輩は両手を合わせて、私にそう言ってきた。本当は協力なんかしたくない。だって私も、合川先輩のことが好きなのだから。
けれど嘘を吐いたのは私だから、頷くしかなかった。
「うん、協力する」
「やったぁ! ありがとう、朱里ちゃん!」
あぁ、目眩がする。
私、合川先輩のことこれからも好きでいていいのかな――?
*
「えぇ、頷いちゃったの!?」
「うん、だってしょうがないじゃん。そうするしかなかったんだもん」
「でもさ、鈴沢先輩って有名だよ? 学年一美人で勉強もスポーツも完璧、って」
ゆめにそう言われ、喉に言葉が詰まる。確かに菜穂先輩は太陽のような明るい存在。
そういえば、と何か言いかけていた。
「鈴沢先輩、何か裏の顔があるって噂が」
「裏?」
「んー、何か女子の陰口言ったり家で暴言吐いてるとか。まぁ知らないけどね」
あんなに素敵な菜穂先輩がそういうことを言うなんて信じられない。噂なんて嘘だろう。
「それは置いといて、協力する気はないんでしょ?」
「まぁ、したくはないけど……。合川先輩と菜穂先輩、正直お似合いだとは思う」
「それでいいの? 朱里の初恋なんだよ?」
そう、菜穂先輩には勝てる見込みなんかない。
でも、それでも――。
「負けないから。合川先輩のこと、絶対好きにさせてみせる」
拳を握りしめながら、私はそう言った。ゆめに言われた通り、これは初恋なんだ。絶対に諦めたくはない。
「……朱里、かわいいね」
「えっ? ゆめ、急にどうしたの」
「恋する女の子ってほんとにかわいい! 応援するからね」
それはゆめもでしょ……と心のなかでツッコミを入れる。けれど親友に応援されることはとても嬉しいことだ。私は素直に「ありがと」と言う。
負けない。私、菜穂先輩に負けない――。