堅物くんの理性、ブチギレ0.5秒前
どうして怒られなきゃいけないのか、さっぱり分からない。
むぅ、と。子供のように頬を膨らませてみせるけど、彼はどうでも良さそうに私を見下したまま数分目が合う。
お互い目線を逸らすと負けなような気がして、一歩も譲らない状況が自然と生まれた瞬間、ため息を吐いてその場から動いたのは先輩の方だった。
少しの間姿を消した先輩が、弓道場の裏から戻ってくると、手に持っている黒色のジャージの上着をフワッと私の腰に回しギュッと縛る。
突然のことに、え?と目が点になる私に、先輩は眉間にシワを寄せたまま、一歩下がって私から距離を取った。
「お前は、言っても素直に聞かなさそうだから、せめて腰に巻いておけ。
これで少しは生足を隠せるだろう」
「……」
「……どうした?間抜けな面でこっちを見て」
「か、」
「か?」
「……かっこいい!」
「……なに?」
なにそれなにそれ、なぁにそれ~~!!
女の人に足を晒してほしくないからって、普通見ず知らずの私にジャージを貸せる男がいる?!
今まで「うぇーいww」系の男としか関わってこなかったせいか、ここまでお堅いと逆に
推 せ る 。