再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
「でも千夏さんも悪いんですよ」

「え?」

「俺を拾って間もない頃に男性のタイプを聞いたら、自分と同じくらい収入が安定してる人が良いとか、自分は家事が得意だから専業主婦が良いとか俺の前でいうから」


「あれは冗談に決まってるでしょ。今時、専業主婦で暮らしていける女性なんているわけない」

「今の俺だったらできます」

「へ?」


「千夏さん好みの男になったから…だから千夏さんの前に現れたんです」

「私は貴方のせいで次の恋愛にいけないのよ…どうしてくれるの?」


押さえていた感情が溢れだし、涙が零れ落ちた。


「そんなに俺のことを想ってくれていたなんて嬉しいです」

「っ」


再び抱きしめられた。嫌なはずなのに。拒絶して突き放せばいいのに…。どうして出来ないんだろう?

鼻をくすぐる柑橘系の匂い。出会った頃とはかなり変わってしまったけれど、一つだけ変わってないところがある。


「千夏さん、大好きです」


私を惑わす甘いマスク。これだけは昔と何も変わっていない。この笑顔に私は堕とされ、昔もキス以上のことをしたっけ。
辛い思い出ばかりじゃない。楽しい思い出だってある。中には思い出したくないほど恥ずかしい記憶だって。


「聞いてください千夏さん」

「なんですか?」

「俺と結婚前提に付き合ってください」

「え…えぇ~!?」

両手を握られたと思ったら、婚約指輪を私の指にはめる藤堂さん。私は突然のプロポーズに開いた口が塞がらなかった。
< 4 / 44 >

この作品をシェア

pagetop