魔術師団長に、娶られました。
「だめよ! ラスボスがうろつくところにエリクを行かせるわけにはいかないわ。行くなら姉様が」
「あ~、なるほど姉様そこに引っかかっていたのか。いませんいません、ラスボスいません。ご安心を。姉様が行くと目立つので、行くなら僕が」
「そんなに言うなら、姉様がエリクっぽく変装すれば良いってことよね?」
「え?」

 全員が「?」となっている中で、ヴェロニカは素早く呪文を唱え、自分の体をべつのものに変化させた。



 にゃぁー……



 毛の白い子猫。
 その姿で、ヴェロニカは得意げににゃあにゃあと鳴く。「なんて言ってる?」とバートラムに振られたエリクが「ええとですね……」と考えてから答えた。

「僕っぽく変装した、と言っていると思います。たぶん、姉様そのものなら黒猫なんですけど、偵察係が僕なら僕の代わりになるように僕っぽく変装……この髪の色」

「変装どころか、変化できるならもうそれでいいだろ。むしろなんでエリク感出して白猫になる必要があるんだよ」

 真顔で言い切ったバートラムの足元で、白猫がにゃあにゃあと鳴く。バートラムは、エリクに「通訳」と命じた。
 エリクは首を傾げながら「おそらくなんですが……」と困惑仕切りの様子で告げた。

「歩幅が思ったより小さいので、塔を降りるのが大儀だから運んでほしいと言っています。団長がこの中で一番体力がありそうなので、運搬役に任命すると。なんかマジでうちの姉がすみません」

 とんでもない横暴を、と冷や汗を流すエリク。
 一方のバートラムはさほど気にした様子もなく「そうかそうか」と頷き、足元の猫を拾い上げた。

「それじゃ、もう少し近くから監視を続けますか、副団長殿」

 バートラムの大きな手にちんまりと収まった白猫は、目を輝かせて一声鳴いた。

「にゃん!!」

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