魔術師団長に、娶られました。
任務完了につき、結果報告
騎士団と魔術師団の長年に渡る不和の解消のため、双方から選ばれた代表同士による結婚を前提としたお見合い、終了。
その翌日、勤務は昼からで良いと言われていたシェーラは、騎士団の寮で鍛錬をつつがなく終えてから昼過ぎに出勤した。
向かった先は、上司であるバートラムの執務室。
普段なら騎士団長が部屋でおとなしくしていることは稀であったが、その日は「前日の報告をするように」と厳命を受けていたのだ。
当然部屋で待ち構えているはず。
シェーラとて、仕事の範囲である出来事を上司に洗いざらい話すことに、異存はない。
「団長、シェーラです。報告に上がりました」
「おう。入れ」
ドアの外から声をかけると、鷹揚な返事がある。
シェーラはきびきびとした動作で部屋に足を踏み入れて、室内を見渡した。
視線がぶつかり、目が合ったところで、にこっと微笑みかけてきたのは白髪の少年騎士エリク。「文武に優れる」の見本のような逸材で、剣の腕もさることながら書類仕事にも強く、入団して一年足らずであるがすでに団長付きという扱いである。
今日も、事務作業の補佐をしていたらしい。
シェーラは目で挨拶を返して、机の前まで進む。
「昨日は、仕事とも思えないくらいゆっくりさせて頂きました。ありがとうございます。アーロン様にもきちんとお会いしてきましたよ」
「うん、そうだな。どうだった、首尾は」
「いまの段階であまり軽率な見通しを口にすべきではないかと思いますが、上々ではないかと。さすがにかっこよかったですね、アーロン様」
束になった書類を手にしていたエリクが、目を丸くしてシェーラを見てきた。
忙しいのか、顔を上げずに書類に目を落としたままだったバートラムも、そのまま動きを止めた。
「そ、そうか。アーロンとはうまくいきそうか。そうかそうか」
それまで見ていた書類を突然両手でぐしゃっと握りしめつつ、とんとん、と机の上で揃えながら頷いている。動揺が見てとれる仕草である。
もの言いたげに張り詰めた空気を感じつつ、シェーラは詳細情報を付け足した。
「あくまで王命による政略結婚を前提としたデートだとわかっていても、ドキドキしました。自分が恋愛でもしているかと錯覚するところでした。一緒に過ごしてみて、アーロン様がおモテになるのはよくわかりましたよ。私みたいに情緒に欠けた女にまで、全然手を抜かないんです。仕事熱心で、真面目な方ですね。気づいたら、ずーっと前からアーロン様のことが好きだったような気になっていました。あの手際はすごいです。魔法みたいでした。あ、魔術師ですから魔法は当然使えますね。あの真面目な仕事ぶりにはほれぼれしました」
「えっ」
押し黙ったバートラムの横で、エリクが声を上げた。
その翌日、勤務は昼からで良いと言われていたシェーラは、騎士団の寮で鍛錬をつつがなく終えてから昼過ぎに出勤した。
向かった先は、上司であるバートラムの執務室。
普段なら騎士団長が部屋でおとなしくしていることは稀であったが、その日は「前日の報告をするように」と厳命を受けていたのだ。
当然部屋で待ち構えているはず。
シェーラとて、仕事の範囲である出来事を上司に洗いざらい話すことに、異存はない。
「団長、シェーラです。報告に上がりました」
「おう。入れ」
ドアの外から声をかけると、鷹揚な返事がある。
シェーラはきびきびとした動作で部屋に足を踏み入れて、室内を見渡した。
視線がぶつかり、目が合ったところで、にこっと微笑みかけてきたのは白髪の少年騎士エリク。「文武に優れる」の見本のような逸材で、剣の腕もさることながら書類仕事にも強く、入団して一年足らずであるがすでに団長付きという扱いである。
今日も、事務作業の補佐をしていたらしい。
シェーラは目で挨拶を返して、机の前まで進む。
「昨日は、仕事とも思えないくらいゆっくりさせて頂きました。ありがとうございます。アーロン様にもきちんとお会いしてきましたよ」
「うん、そうだな。どうだった、首尾は」
「いまの段階であまり軽率な見通しを口にすべきではないかと思いますが、上々ではないかと。さすがにかっこよかったですね、アーロン様」
束になった書類を手にしていたエリクが、目を丸くしてシェーラを見てきた。
忙しいのか、顔を上げずに書類に目を落としたままだったバートラムも、そのまま動きを止めた。
「そ、そうか。アーロンとはうまくいきそうか。そうかそうか」
それまで見ていた書類を突然両手でぐしゃっと握りしめつつ、とんとん、と机の上で揃えながら頷いている。動揺が見てとれる仕草である。
もの言いたげに張り詰めた空気を感じつつ、シェーラは詳細情報を付け足した。
「あくまで王命による政略結婚を前提としたデートだとわかっていても、ドキドキしました。自分が恋愛でもしているかと錯覚するところでした。一緒に過ごしてみて、アーロン様がおモテになるのはよくわかりましたよ。私みたいに情緒に欠けた女にまで、全然手を抜かないんです。仕事熱心で、真面目な方ですね。気づいたら、ずーっと前からアーロン様のことが好きだったような気になっていました。あの手際はすごいです。魔法みたいでした。あ、魔術師ですから魔法は当然使えますね。あの真面目な仕事ぶりにはほれぼれしました」
「えっ」
押し黙ったバートラムの横で、エリクが声を上げた。