魔術師団長に、娶られました。

幸せ

 薄々気づいていたが、アーロンは非常に筋肉質な体つきをしている。

(騎士団の男性陣の、体重しっかりめで筋骨隆々……とはちょっと違うんだけど。一見痩せていて、脱ぐと無駄なところがなく引き締まっていて、きっちり鍛えられていて……すごく綺麗)

 ぱさ、と目の前でシャツを脱いで裸身をさらした「夫」アーロン。その姿を、ベッドに腰掛けていたシェーラは、視線を逃すこともできずに見つめてしまっていた。
 花婿の礼装も似合っていたが、惜しげもなくさらされた肉体は、彼本来の揺るぎない美で完結していて、男性の裸にこれまでろくに興味を持ったことのないシェーラの目をも釘付けにしたのだ。

 アーロンはくすっと笑って、肩に落ちてきた黒髪を後ろへと払い、そのまま手にしていた紐で軽く束ねる。それが、寝るためというよりも「これから動く準備」だと気づいて、シェーラは声に出さずに悲鳴を上げた。

「シェーラさん、湯浴みして着替える間に、なにか食べたり飲んだりしました? 補給は大切ですよ」

 距離を置いたまま、話しかけてくる。
 新婚初夜にのぞむにあたり、ベッドへたどりつくまでにそれなりの準備があったのだ。シェーラはメイドたちにぴかぴかに磨き上げられて、透けるような素材の、布とも思えないひらひらした肌着をすすめられ、シルクのガウンを羽織らされていた。腰紐を結んではいるのだが、不用意に動けば、すぐにでも肌や素足が露出しそうで、先程から身動きもできないまま膝に手を置き、固まっている。

「はい、あの、甘いお酒を少しいただきました。普段あまり飲まないので、本当に少しだけ」

 緊張しながら答えると、アーロンが一歩近づいてきた。優しげな瞳に見つめられて、胸がどくどくと鳴る。

「なるほど、だから血色が良いのかな。頬が赤くて、目が潤んでいて、かわいい。気分はどうですか。俺のことは怖くない?」

 アーロンはシェーラの足元で床に片膝をついて跪き、握りしめられていた手を取って顔を上げた。
 その仕草で、心臓がどくんと反応したシェーラは「大丈夫です」と裏返った声で答える。

「無理は……させないように気をつける。俺に余裕がないのは、本当に申し訳ない」
「余裕なくて、大丈夫です! 私も全然ないですし、なにかあっても体は頑丈なので」
「それどういう意味? 手荒にして欲しいってこと?」

 苦笑しながらアーロンは立ち上がり、シェーラの膝裏に手を差し入れ、胸元まで抱き上げた。自らもベッドに乗り上げて、十分な広さのある場所にシェーラを横たえる。
 手早く腰紐を解くと、ガウンを左右にくつろげて、恥ずかしい肌着を身に着けたシェーラの体に視線をすべらせてきた。

「これは、ですね! あの、用意されていたものでして。せっかく私のために用意して頂いたものを、恥ずかしいとかわがまま言うのもどうかと思ったので、身につけてきたんですが……!」

 胸元も頼りないのだが、腰回りもひらひらですけすけなのだった。アーロンの視線がそこへ向けられると、もうどうして良いかわからず、シェーラは横を向いた。

「あまり、じっくり見なくても……!」
「見せて。すごく、透けてて……。ここ、色まで見える」

 アーロンは、魅入られたようにぼーっとしながら、シェーラの胸元に大きな手のひらを置いてきた。骨ばった指が、遠慮がちにふわっと片方の胸を持ち上げる。硬くなりはじめた頂きを、指の腹で撫でるようにかすめて何往復かされると、早くも足の付根の奥にじんわりとした疼きが感じられて、シェーラは喘ぎ声を上げた。

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