まだ見ぬ恋の待ち合わせ (短)
「濡れてるよ。その真新しい制服を見るに、君、一年生でしょ?」
「そ、う……ですが……」
大きな黒い車に乗り、窓ガラスを降ろして私を見る、その人は――
本来なら助手席だろう場所に座って、ハンドルを握っていた。つまり、左ハンドル。高級車!
「わ、わわわ! 私、何かしてしまったでしょうか⁉」
「え?」
高級車、こわ!
それを普通に乗りこなしてる人も、こわ!
見た目は大学生くらい若く見えるけど……左ハンドルだよ? 高級車だよ?
そんなに高い車を買える人が、若いわけがない! きっと怖い大人の人なんだ!
「もし何かしてしまったなら、すみませんっ!」
「あ、ごめん。驚かせちゃったね」
はは、と笑った男の人は――
私と似た茶色の髪に、いかにも高級そうなネクタイをつけ、いかにも高級そうな生地のスーツを着ていた。
そして慣れた手つきでスーツの胸ポケットからケースを取り出し、一枚のカードを私に見せる。