結ばれなかった赤い糸
探偵が突き止めた花火の居場所は、前たちがいる街から飛行機で行かなくてはならない距離である。前はすぐに立ち上がり、花火がいる県行きの航空チケットを買った。

数時間後、前は花火のいる県に降り立った。田園風景が辺りに広がっている場所である。よく言えばのどか。悪く言えば何もない。

「こんなところに花火が……」

前が住んでいる街とは違い、家もまばらで近所というには遠い気がした。辺りを見回しながら前は呟く。

花火と会って、何を話したいのかは前はわからなかった。結婚をしてほしいとプロポーズをするのか、何故いなくなったのかと問いただすのか、凪いだ心ではわからなかった。

見慣れない風景の中、前は歩いていく。もうすぐで花火が住んでいると探偵が突き止めてくれた家だ。緊張が生まれ、手に汗が滲んでいく。

「この辺りのはず……」

スマホの地図を確認しながら、前は足を止める。目の前には一軒の家が建っていた。表札を確認するも、そこには「手鏡」とは書かれていない。
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