迷路の先には君がいた

 芙蓉は汚れたシーツやカバーなどをまとめて大きな袋へ入れていく。

 リネン室は客室係の情報交換に使われたりすることはあるが、このホテルはそれがひどい。

 この間も大きな声で愚痴を言い合ったり、何か食べている人もいたくらいだ。そして、まれに逢引している従業員がいたりする。

 今日はさすがにVIPもいるし、こんなところで油を売っている人もいないだろうと思ったがそうでもなかったようだ。

「スワンならありえないわね。今頃クビだわ……」

「そうかもな。だが、スワンホテルオーナーはまだお前なのにどうしてここにいる?」

 芙蓉はびっくりして声のする方を見た。リネンの大きな袋が二つ、その後ろに長椅子がある。

 そこで皆休憩したり、座って愚痴を話したりしているところだ。長椅子の後ろはカーテンがかかっている。

 間違いない。その声はカーテンの奥から聞こえてきた。芙蓉は恐る恐るカーテンをめくった。

 
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