迷路の先には君がいた
 家のことでここ四年は悩みも深く、プライベートや仕事もすべてそのことに支配されてきた。

 四年前、研修が終わる直前にその悲しい知らせはもたらされた。芙蓉は一瞬悩んだが、決断は早かった。

 彼とロンドンにある研修先のホテルで普通に別れてから、一度も電話やメールに返事もせず、彼からの連絡を全て絶った。

 スワンホテルへ彼が訪ねてきたときも、すでにそこにいなかった。その後諦めたのか、鷹也は芙蓉と距離を置いた。

 ここ最近の彼は、とても華やかな女性関係を築いていると噂になっていた。

 芙蓉は噂を聞くたびに、彼にとって自分は完全に過去になったのだと痛感した。

 それまでは彼の特集記事で姿を目にするのもつらかったのだ。

 芙蓉は彼の顔を四年ぶりに正面から見た。あの時は自分の人生の線上にいた人。
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