迷路の先には君がいた
「芙蓉!」
彼に腕をひっぱられた。足が止まった。
鷹也と言う人は昔から社交的で、人と話すときは相手の目を見て話す。そして笑顔を絶やさない。根っからのホテルマンだった。
その反面、人から見えないところで普段から自分を律しているのを芙蓉はよく知っていた。
感情は常に隠し、表に出さない。その彼が珍しく感情を顔に乗せ、声を怒らせた。
「あなたに見られたくなかったから、わざわざ今日だけ客室担当になってここに来たのに……どうしてここにいるのよ!どうしてなの……」
芙蓉も彼につられて、つい感情をあらわにしてしまった。そして、振り向いて涙を溜めた目を彼に見せてしまった。