迷路の先には君がいた

 鷹也はそれを見て何かスイッチが入ったのだろう。蹴るようにして音を立てて立ち上がると、芙蓉の腕を引き寄せ、広い胸に彼女を包み込んだ。

 そしてあの頃のようにギュッと抱きしめた。

「芙蓉。会いたかった」

 その言葉と懐かしい彼の抱擁に彼女は取り込まれそうになった。しかし息を吸った瞬間、我に返った。芙蓉の知る彼の香りと違っていたのだ。

「ん……!」

 驚いた芙蓉は鷹也の胸を強く押して腕の中から逃げた。

「芙蓉教えてくれ。何故だ。四年前、どうして急に俺から逃げた?」
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