迷路の先には君がいた
 だが彼はこぶしをギリギリと音が立つほど握った。

「芙蓉……四年ぶりにお前が俺の前に現れ、俺の問いに返事をした。ようやくだ。忘れろだと?出来るなら苦労してない。やっと長い迷路の出口が見えた」

 鷹也は少し考えこんだ後、リネン室を後にした。そしてあてがわれた貴賓室へ戻ると、待っていた男に言った。

「佐々木。少し探ってほしいことがある」

 立ち上がった佐々木はファイルとペンを持って、主の顔を見てうなずいた。鷹也はこまごまと指図をした。

 しばらくして、佐々木は先に部屋を出た。鷹也はロビーに降りると、芙蓉がいるなら彼女も来ているだろうと当たりをつけてコンシェルジュを訪ねた。

「久しぶりだね、細井さん」
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