迷路の先には君がいた

「中田様が少し本気でお調べになればおわかりになるのではないですか?今まで調べておられないのはなぜです」

「彼女が逃げたがっていたから……これでも僕はショックでね。しばらく彼女のことを考えるのがつらかった。向き合う勇気もなくて、恥ずかしながら僕自身も彼女から逃げてきた」

「お嬢様のお苦しみはいまだに続いています。どうか、助けてさしあげてください。お嬢様はご自身からは決しておっしゃらないと思います」

「細井さん」

「はい」

「芙蓉に伝えてくれ。もう逃げるな、と……」

「はい、わかりました」

 彼は後ろから来た佐々木と共に、ホテルを後にした。
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