迷路の先には君がいた

 四年前、帰国してから芙蓉はニューレジェンドホテル本店の近くにある従業員用の女子寮で細井と質素に暮らしていた。

 細井は育ての母だった。芙蓉の実の母は幼いときに病死していたのだ。

 細井は、スワンのヘッドコンシェルジュの妻であり、彼女自身も有能なコンシェルジュだ。

 そしてスワンホテルグループは、元々芙蓉の母方の親族が経営する日本有数の海外客向けに特化したホテルグループだった。そこへ父は入り婿として入った。

 でも芙蓉の祖父は父にオーナーを決して譲らなかった。オーナーは母であることが結婚の条件だった。

 その父は芙蓉が生まれたころようやく形ばかり支配人になった。それも、本店ではなく、一番外国人の少ない支店ホテルだ。

 芙蓉の母はお嬢様だった。アメリカで出会った英語も堪能で頭の回る父に惚れこんでしまい結婚した。
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