迷路の先には君がいた

 繁が幼馴染でスワンの一人娘である芙蓉を昔から好きだったのを知っていたオーナーは、繁の嫁に迎えてスワンとレジェンドを合併したがっていた。

 しかし、彼女が鷹也を選んで、繁が大学を転学したことを苦々しく思っていたのだろう。オーナーは帰国した彼女に向かってこう言った。

「芙蓉ちゃん。このお金はね、返してもらわなくてもいい。いずれ、繁と一緒になってくれればそれでいいよ」

「貝原のおじさま……それは……」

 横に座っていた繁は芙蓉を見て言った。

「まさか、鷹也からお金を借りるつもり?」

「そんなことは絶対しません。彼には絶対に言わないで……黙って彼の前から姿を消したのはそのためよ」
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