迷路の先には君がいた
「芙蓉ちゃん。君のお父さんのしたことを内密にするよう手を回してる。うちの方にも迷惑なんだよ。同じお客様が多いからね。日本のホテルグループの信用に関わる問題なんだ」
「芙蓉。父さんはだからこそお金を出してスワンを救ったんだよ。あくまで僕とのことは後付けだ。君が僕と一緒になれば無理にお金を返してもらうことはないから……」
「スワングループが何事もなく営業していられるのはおじさまのお陰です。本当に感謝しています」
「じゃあいいかな、繁とのこと。もともと、大学で中田の息子に出会うまではそういう話も出ていただろ」
「……わかりました。でも……結婚はしばらく待っていただけませんか?」
「どういう意味だい?」
「卒業してようやくホテルの勉強を終え、やっと実地です。数年は繁さん同様ホテルの仕事に慣れるまで働かせてください」