迷路の先には君がいた

 自分の人生は、最初からスワンホテルと共にある。父の失態を娘が償うしかない。

 幼い頃より祖父にそうやって育てられてきたのだ。芙蓉は責任感だけはあった。

 だが、芙蓉は今すぐに繁と結婚したら、病気になるかもしれないと思っていた。

 愛する鷹也の前から黙って姿を消し、はや一か月。いまだに鷹也が恋しくて毎晩眠れないのだ。

 それくらい彼を愛していたし、彼とずっと一緒に生きると決めていた。

 そんな彼を忘れるのには絶対的に時間が必要だ。

 それに鷹也がすぐにこのことを知れば、ツインスターホテルの父親に借金をしてグループのお金を使い、芙蓉を助けると言いだしかねない。
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