迷路の先には君がいた
佐々木は思った。旦那様は坊ちゃんを完全に信頼しておられる。
奥様と違い、息子の手腕を目の前でここ四年見てこられた。グループを任せられる器だと思っておられるのだろう。
「奥様は、相変わらず坊ちゃんがご心配なようですね」
「ああ、母さんは俺の私生活に文句ばかりだったからな。でも文句止まりだ。親友の親は皆、政略結婚を企んだが、うちの両親はそれをしない。俺は恵まれてるな」
「特に旦那様は、ここ半年の坊ちゃんの身の処し方をご覧になられて安堵されているようでした。奥様はまだ半信半疑のようでしたが……」
「母さんの信用はこの四年でがた落ちだ。女性として俺の今までを非難するのは理解できる。母さんのお気に入りの崇でも使って懐柔するよ」