迷路の先には君がいた

「お嬢様。とにかくこれでスワンに戻れますね。貝原家への嫁入りも実質なくなりました。そのうえ、スワンもそのままです。ゆっくり中田様と話してください。彼のお嬢様を想う気持ちは間違いありませんよ」

 そう言うと、彼は席を立った。コンシェルジュとして立っている由里を指さした。

「そこで妻と話してきます。お嬢様は中田様とお帰りください。あとのことはこちらにお任せを……」

「圭吾さん、あなたったら……」

「細井さん、ありがとう。芙蓉行くぞ。いくらでも文句を聞いてやる。無視されるよりはずーっとましだからな」

 芙蓉は真っ赤になって、手を握る鷹也にひきずられていった。
< 74 / 112 >

この作品をシェア

pagetop