迷路の先には君がいた

「本当に最低です。昔はこんな人じゃなかったですよね。私から中田様にお話ししてもいいですよ。今こそ助けてもらったらどうです?支配人も含め、以前は親しくしておられた旧知の仲ではございませんか。説得する方法もあるのではないかと思うんです」

「繁は私を近く結婚して手に入れることを彼に自慢したいだけよ。それに鷹也を巻き込みたくない。そのために彼を避けてきたのよ」

「芙蓉様……」

「鷹也はようやく目標に近づいている。足を引っ張りたくない」

 細井は芙蓉の肩に手を置いた。

「わかりました。でも私は助かります。速水様のいらっしゃる本日だけでもコンシェルジュに入りたいと言ってあったんですけど、今日だけは絶対芙蓉様にするとおっしゃって支配人は耳を貸してくださらなかった。こういう理由だったんですね」

「お客様に私的な理由でご迷惑をおかけするなんて、ホテルマンとして一番避けねばならないことだわ」
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