迷路の先には君がいた
「その通りです。このホテル……入ってわかりましたが従業員も想像以上にまずいですね」
「そうね……スワンと比べると目も当てられないわ。時間がないから急いでお願いします」
「わかりました」
彼女は出て行った。芙蓉は客室へ入るとシーツ、タオル類の交換を終え、リネン室へカートを運び込んだ。
そこではいつものように他の客室係の男女が長椅子に腰かけていちゃいちゃしている。若い女性の客室担当ふたりが何かお客様の愚痴を話していた。
芙蓉が咳払いをすると、一気に静かになった。
芙蓉が仕事を始めると、しばらくしてドアの開閉音がした。皆そろって出て行ったようだ。
「はあ……しょうがない人達ね」