生物と、似つかわない双子の間で。
変化
「岩田由紀乃」
「…はい」
「放課後、職員室に来い」
「……」
泣いていた坂本先生は、幻覚だったか…妄想だったか…。
いつも通り口が悪い坂本先生。
…しかし、その顔には
何か憑き物が取れたかのような、そんな表情が浮かんでいた。
放課後、大人しく職員室に向かう。
いつものように職員室の入口に坂本先生は立っていた。
「こっち、来い」
そう言ってまた生徒相談室に向かう。
その道中、坂本先生は小声で言葉を漏らした。
「岩田…本当にごめんな」
「……」
何も言えず、黙り込んだまま。
坂本先生と一緒に生徒相談室に入る。
いつものように椅子に座り、お互い向き合った。
「………」
「………」
先生。何も、言わない。
ジーっと坂本先生の顔を眺めてみる。
…確かに、絢斗先生と双子と言うだけある。
良く見ると、眼鏡を外した絢斗先生とそっくりだ。
「…何だよ」
「…いや、それはこちらの台詞です。何ですか」
「……」
また、黙り込んだ。
そして、ゆっくりと頭を下げてポツリと一言。
「本当に、すみませんでした」
涙と共に、零した。
その日を境に、学校での坂本先生は様子が変わった。
笑顔こそまだ無いけれど、態度と口の悪い先生はいなくなった。
「由紀乃~。最近さ、冷酷先生が冷酷じゃなくなってない?」
「…うん」
「何かあったのかな?」
「…何か…思うことがあったんじゃないかな。…知らんけど」
別に、『坂本先生』がどんな心境だろうと。
私には関係無いし、興味も無いけれど…。
「冷酷じゃない坂本先生…意外と、良いかも…」
「えぇ!?」
「由紀乃、紹介して!!」
「いやいやいや、止めときな!?」
『絢斗先生の弟さん』とは、穏やかに笑顔も交えて会話が出来るようになった。