生物と、似つかわない双子の間で。
授業を終え、塾の隣にある公園のベンチで絢斗先生を待った。
……絢斗先生。
本当に期待しても、良いの?
心拍数が上がったまま下がらない。
ドキドキしすぎて、胸が苦しい。
「ゆきちゃん、お待たせ」
「絢斗先生…」
鞄を持って出てきた先生。
塾の建物の中に居る時の先生とは、また雰囲気が違う気がする。
「僕、電車通勤だから。駅まで徒歩なんだ。…もし良ければ、一緒に歩かない?」
「…うん、歩く」
私は先生の隣を歩きながら自転車を押して歩いた。
「ゆきちゃん。さっきの話…嘘じゃないよ。僕、ゆきちゃんだから優しく出来るし、撫でてあげたくなる」
「………」
「先生としてではなく、1人の人として言うけれど。僕は、頑張り屋な君のこと、いつの間にか好きになっていたみたい」
「………」
「ゆきちゃん。君が好きだよ」
目頭が熱くなる。
ずっと片想いをしていた絢斗先生に、こんな言葉を言って貰える日がくるなんて。
「…絢斗先生。生徒にそんなこと言って大丈夫なの?」
「学校じゃないから。それにうちの塾は、こういうのは禁止だと公言されていないし」
駅舎の影にあるベンチの横に自転車を停め、絢斗先生と並んで座る。
先生は左手で私の手を優しく握り、右手で肩を抱いてくれた。
「絢斗先生」
「なに?」
「私も、ずっと前から…先生のことが好き」
「うん」
「だから…凄く嬉しい」
「…うん」
左手を私の手から離し、その手も私も肩に回す。
そっと抱き寄せられ、顔を向かい合わせて…。
優しく、そっと…そっと、キスをした。
「……」
無言で見つめ合い、再度キスをする。
「……」
絢斗先生の香りを強く感じる。
脳が…蕩けそう…。
「こんなところで…何だか悪いことをしているみたい」
「…大丈夫。影だから。誰も見ていないよ」
頭を優しく撫でてくれる手。
優しく抱きしめてくれる腕。
熱く柔らかい唇。
絢斗先生の全てが愛おしく感じて、私も先生の体を強く抱きしめた。