【連載版】田舎者にはよくわかりません~ぼんやり辺境伯令嬢は、断罪された公爵令息をお持ち帰りする~【書籍化+コミカライズ準備中】
13 しっかりとした大人の女性になりたいです
テオドール様がバルゴア領に来てから一週間が経ちました。
自室に飾っていたシロツメ草の花冠(はなかんむり)は、乾燥し色あせてしまっています。
テオドール様にいただいたものなので、なんとか綺麗に保管したかったのですが残念です。
でも、枯れてしまう前に花冠からシロツメ草を何本かぬいて押し花にしたものは、とても綺麗にできています。
これでしおりを作ろうかな?
そんなことを考えていると、扉がノックされメイドが顔を出しました。
「シンシア様、今日もテオドール様が来られましたよ」
「はい、今行きます」
バルゴア領に着いてから、私は毎日のようにテオドール様にバルゴア城内を案内しています。
王都のお城と作りが違うせいか、なかなか覚えられないそうです。
物覚えが良いテオドール様にしたら珍しいですが、私としては毎日テオドール様にお会いできるのでとても嬉しいです。
「お待たせしました」
私がそう伝えると、テオドール様は輝くような笑みを浮かべます。
「シンシア様。お時間をいただいてしまい、申し訳ありません」
「いえいえ、テオドール様のお役に立てるなら嬉しいです!」
さりげなくエスコートしてくれるテオドール様。
二人でのんびりと城内を散策したあとに、私の部屋でお茶を飲むのが日課になりつつあります。なので、自室に戻るとお茶会の準備は完璧でした。
向かい合ってお茶をする私達には、メイドから生暖かい視線が送られています。付き合いが長いメイドには、私の片思いがバレてしまっているのかもしれません。
「テオドール様、バルゴア領はどうですか?」
「とても良いですね。人はおおらかで土地も豊かです」
「良かった……。ゆっくりしてくださいね」
「そのことなのですが」
テオドール様は、端正な眉を困ったように下げました。
「実は、私から辺境伯にお願いして、バルゴア領で役人として働かせていただくことになりました」
「えっ!? せっかく癒されに来たのにですか?」
「はい。もう充分癒されましたので」
そういうテオドール様は、たしかに王都にいたときより健康そうです。
「でも、もう少しゆっくりしてもいいと思うんですけど……」
「やりたいことができたのです」
そういうテオドール様の瞳は、とても真剣です。そういえば、兄嫁様となにやら話していましたものね。
「わかりました。私、応援します。……これからお忙しくなるなら、もうこうして一緒にお茶はできませんよね?」
悲しくて泣いてしまいそうですが、テオドール様の邪魔をしてはいけません。
ガタッと大きな音を立てて、テオドール様が椅子から立ち上がりました。
「いえ、忙しくはなりません!」
「そ、そうなのですか?」
「はい、仕事と言っても少し手伝いをさせていただくだけです。なので、これからもシンシア様に会いにきます」
それはとても嬉しいですが。
「ご、ご迷惑では?」
「まったく」
テオドール様の手が私の手にふれました。
「私がシンシア様に会いたいのです。会っていただけますか?」
切なそうな瞳で、そんなことを言われたら勘違いしてしまいそうです。
「も、もちろんです! 私も、その、テオドール様とお話するの大好きですから」
「それはお友達として、ですか?」
赤い目に見つめられると、私の胸の内が見透かされてしまいそうです。必死にコクコクうなずくことしかできません。
「そうですよね……」と言いながら、私の手をやさしく握るテオドール様。
「シンシア様のお気持ちわかりました」
テオドール様の口元は微笑んでいるのに、目が笑っていないように見えるのは気のせいでしょうか?
なんだか居心地の悪さを感じて、私は話題を変えました。
「そういえば、王都では許可なく女性にふれることはとても失礼なことなのですよね?」
「はい、そうですね」
「王都から出るとそのルールはなくなるんですか?」
私の言葉にテオドール様は、不思議そうな顔をします。
「いえ、そのようなことはありません」
「でも、あの、テオドール様の手が……」
私の視線を追ったテオドール様の目が見開きました。
「こ、れは」
パッと手を離したあとに「すみません、無意識でした」と謝罪されます。
「いえいえ! お気になさらず」
もしかしてテオドール様、私のこと女性に見えていないのかも?
兄嫁様と結婚する前の兄は、私の頭をぐしゃぐしゃになでたり、迷子にならないようにと手を繋ごうとしてきたりしていたので、もしかして、そういうノリですか?
私のこと、子どもか妹だと思っている?
ズーンと気分が落ちました。
それと同時に、テオドール様に子どもや妹扱いされるのは嫌だと気がつきます。もっとしっかりした大人の女性になれば、テオドール様も私を女性扱いしてくれるかもしれません。
テオドール様は、見知らぬ土地に来てもしっかりとお仕事をされています。そんなテオドール様に認めてもらうために、私ももっと頑張らなければ!
でも、しっかりした大人の女性って、どうしたらなれるのでしょうか?
自室に飾っていたシロツメ草の花冠(はなかんむり)は、乾燥し色あせてしまっています。
テオドール様にいただいたものなので、なんとか綺麗に保管したかったのですが残念です。
でも、枯れてしまう前に花冠からシロツメ草を何本かぬいて押し花にしたものは、とても綺麗にできています。
これでしおりを作ろうかな?
そんなことを考えていると、扉がノックされメイドが顔を出しました。
「シンシア様、今日もテオドール様が来られましたよ」
「はい、今行きます」
バルゴア領に着いてから、私は毎日のようにテオドール様にバルゴア城内を案内しています。
王都のお城と作りが違うせいか、なかなか覚えられないそうです。
物覚えが良いテオドール様にしたら珍しいですが、私としては毎日テオドール様にお会いできるのでとても嬉しいです。
「お待たせしました」
私がそう伝えると、テオドール様は輝くような笑みを浮かべます。
「シンシア様。お時間をいただいてしまい、申し訳ありません」
「いえいえ、テオドール様のお役に立てるなら嬉しいです!」
さりげなくエスコートしてくれるテオドール様。
二人でのんびりと城内を散策したあとに、私の部屋でお茶を飲むのが日課になりつつあります。なので、自室に戻るとお茶会の準備は完璧でした。
向かい合ってお茶をする私達には、メイドから生暖かい視線が送られています。付き合いが長いメイドには、私の片思いがバレてしまっているのかもしれません。
「テオドール様、バルゴア領はどうですか?」
「とても良いですね。人はおおらかで土地も豊かです」
「良かった……。ゆっくりしてくださいね」
「そのことなのですが」
テオドール様は、端正な眉を困ったように下げました。
「実は、私から辺境伯にお願いして、バルゴア領で役人として働かせていただくことになりました」
「えっ!? せっかく癒されに来たのにですか?」
「はい。もう充分癒されましたので」
そういうテオドール様は、たしかに王都にいたときより健康そうです。
「でも、もう少しゆっくりしてもいいと思うんですけど……」
「やりたいことができたのです」
そういうテオドール様の瞳は、とても真剣です。そういえば、兄嫁様となにやら話していましたものね。
「わかりました。私、応援します。……これからお忙しくなるなら、もうこうして一緒にお茶はできませんよね?」
悲しくて泣いてしまいそうですが、テオドール様の邪魔をしてはいけません。
ガタッと大きな音を立てて、テオドール様が椅子から立ち上がりました。
「いえ、忙しくはなりません!」
「そ、そうなのですか?」
「はい、仕事と言っても少し手伝いをさせていただくだけです。なので、これからもシンシア様に会いにきます」
それはとても嬉しいですが。
「ご、ご迷惑では?」
「まったく」
テオドール様の手が私の手にふれました。
「私がシンシア様に会いたいのです。会っていただけますか?」
切なそうな瞳で、そんなことを言われたら勘違いしてしまいそうです。
「も、もちろんです! 私も、その、テオドール様とお話するの大好きですから」
「それはお友達として、ですか?」
赤い目に見つめられると、私の胸の内が見透かされてしまいそうです。必死にコクコクうなずくことしかできません。
「そうですよね……」と言いながら、私の手をやさしく握るテオドール様。
「シンシア様のお気持ちわかりました」
テオドール様の口元は微笑んでいるのに、目が笑っていないように見えるのは気のせいでしょうか?
なんだか居心地の悪さを感じて、私は話題を変えました。
「そういえば、王都では許可なく女性にふれることはとても失礼なことなのですよね?」
「はい、そうですね」
「王都から出るとそのルールはなくなるんですか?」
私の言葉にテオドール様は、不思議そうな顔をします。
「いえ、そのようなことはありません」
「でも、あの、テオドール様の手が……」
私の視線を追ったテオドール様の目が見開きました。
「こ、れは」
パッと手を離したあとに「すみません、無意識でした」と謝罪されます。
「いえいえ! お気になさらず」
もしかしてテオドール様、私のこと女性に見えていないのかも?
兄嫁様と結婚する前の兄は、私の頭をぐしゃぐしゃになでたり、迷子にならないようにと手を繋ごうとしてきたりしていたので、もしかして、そういうノリですか?
私のこと、子どもか妹だと思っている?
ズーンと気分が落ちました。
それと同時に、テオドール様に子どもや妹扱いされるのは嫌だと気がつきます。もっとしっかりした大人の女性になれば、テオドール様も私を女性扱いしてくれるかもしれません。
テオドール様は、見知らぬ土地に来てもしっかりとお仕事をされています。そんなテオドール様に認めてもらうために、私ももっと頑張らなければ!
でも、しっかりした大人の女性って、どうしたらなれるのでしょうか?