突然シンデレラ~王子様は実在しました~
「もうすぐ専門学校を卒業するんです」
「ああ」
「結婚しても、働きたいです!」
「へ⁉」
「え⁇」

 雪哉さんからは、驚きというよりは気の抜けた声が上がる。

「希々は、パッケージデザインの仕事がしたいんだろう?」
「なんで?」
「知っているのかって? 希々のバイトしてるデザイン事務所の所長は友人なんだ」
「ええっ!? あっ」
「どうした?」
「今日の披露宴に呼んでくれたのは」
「ああ、みんな希々と俺のことを祝ってくれている」
「知っている人達がいて驚きました。すごく嬉しかったんです」
「みんな頑張っている希々を応援している。俺もその一人だ。結婚したからと言って、夢を諦める必要はないし、好きなことをしたらいい」
「……」

 優しい言葉に自然と涙が溢れてくる。政略結婚で、何もかも諦めなくてはならないのだと、勝手に思っていた。運転している雪哉さんが、空いている方の手で私の頭を優しく撫でてくれる。

「今まで一人で頑張ったな……」

 その一言が、今日までの私を労ってくれているようで、更に涙が溢れた。
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