突然シンデレラ~王子様は実在しました~
「いきなり玄関……」

 この状況が理解出来なくて、呆然としたまま呟いてしまう。

「ああ、ここは最上階で俺達の住まいだけだ」
「最上階……」
「どうした? 高所恐怖症か?」
「いえ……。 そうではなくて、現実離れし過ぎていて」
「どうだ? 城ではないが、シンデレラに近づいたか?」
「シンデレラどころじゃありません! 信じられない……」
「それは良かった。姫、中を案内します」

 急に王子様モードになった雪哉さんが私をエスコートしてくれる。お揃いのスリッパに履き替えて、廊下を進み突き当りの扉を開いて中に入ると……

「す、凄い……」

 正面の大きな窓の向こうには、宝石箱のようなキラキラと輝く夜景が広がっていた。

「どうだ? 気に入ってくれたか?」
「は、はい」
「希々のバイト先まで徒歩圏内だ」
「ええっ?」
「区が変わるから、住所では気づかないかもとは思ったが、知らなかったみたいだな。ここなら働きやすいだろう?」
「雪哉さんは? 大丈夫なんですか?」
「ああ、俺は車移動だし、今までと通勤時間は変わらないから問題ない」
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