突然シンデレラ~王子様は実在しました~
 そんな私でも知っている高級品。高級車一台は優に超える値段はするはずで、急に左手が重くなった。

「それでは、誓いのキスをーー」

 指輪に気を取られている間にも、式は誓いのキスまで進んでいる。

 雪哉さんと向かい合うと、綺麗な指が私のベールをそっと上げた。ここで初めて、ベール越しではない王子様と目が合う。

 私の心臓は、信じられないくらいにドクドクとしていて、頬が赤く染まっていくのがわかった。

 ゆっくりと顔が近づいてくるので、思わずギュッと目を瞑ってしまう。

「フッ」と微かに笑ったような息遣いが聞こえたあと、私の唇に柔らかい感触が触れた。


 私にとってのファーストキスの相手は、極上の王子様ーー


 この瞬間、今まで虐げられていた私が、シンデレラへの階段を一歩上ったのだ。

 まだ王子との結婚は現実味がなくて、今はただ母や妹とおさらばできることが、喜びのウエイトを占めている。

「俺が最高のシンデレラにしてやるから、愛される覚悟をしろ」

 俺様な言葉には愛を感じるーー


 そして、母と妹の悔しそうな顔は一生忘れないーー
 
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