突然シンデレラ～王子様は実在しました～

　憧れていたシンデレラの世界は、現実になると慣れるまでが大変だ。

　最上階へ辿り着いても、一人で過ごすには広すぎる。ソファに座って外の景色を眺めている間に、疲れもあって眠ってしまっていた。

「希々、希々」

　遠くで誰かが呼んでいる……

　けれど、重い瞼はなかなか開いてくれない。

　次の瞬間、私の唇に柔らかいものが触れた。驚いて目を開けると、至近距離でドアップの王子の顔が……

「んんっ」
「おはよう。姫を起こすのはやっぱりキスだな」
「へ⁉」

　極上の笑みで私を見ている。

「こんなところで寝ていたら風邪引くぞ」

　恋愛経験もなければ、優しい言葉を掛けられ慣れていない私には、キラキラ王子が眩しい。

「今から食事に行こうと思っているんだが、疲れているならデリバリーにするか？」
「いえ、大丈夫です！」

　今、これ以上二人でいると心臓がおかしくなりそうだ。

「じゃあ、行こうか」
「えっと、どこに？」
「何か食べたい物は？」
「お任せします」