突然シンデレラ~王子様は実在しました~
 車に乗せられて連れて来られたのは誰もが知る高級ホテル。雪哉さんはスーツを着ているけれど、私は普段着のワンピースだ。

 マンションを出る前に、服装を聞けばよかったと思ってももう遅い……

「あのっ、この服装で大丈夫ですか?」
「ん? 似合ってる」
「そうじゃなくて、高級ホテルには似つかわしくない気が……」
「そんなことは気にしなくていい。希々は、自分らしくいたらいい。気になるなら、食事の後に買い物へ行こうか」
「へ⁉」
「これから必要なものを買いに行こう」

 必要な物ってなんだろう? 思い浮かぶのは食品くらいだ。

 ホテルの最上階のレストランの個室という非日常の空間で、王子様と食事。何度も言うけれど、すでにシンデレラ以上な気がする。

――コンコン

「はい」
「失礼いたします。宇田川様、ご来店いただきありがとうございます。この度は、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」

 先程は、レストランの責任者が挨拶に来ていたけれど、次はホテルの支配人だという。
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