突然シンデレラ~王子様は実在しました~
 ドラマや映画で見るような、ここからここまでと言いそうな勢いで商品が積まれている。

 ところが、私が着て来た服に着替えて試着室を出る時には、商品はすべて片付けられたあとだった。

「行こうか」
「は、はい……」

 試着だけだったのかと安堵したのも束の間、数日後には自宅に大量の荷物が届き驚くことになる。

「あと必要なものは?」
「食品?」
「まだ、何も説明してなかったな。必要なものがあれば、コンシェルジュが用意してくれる」
「買い物へは?」
「行ってもいいが、行く必要がないな」
「……」
「掃除業者が週3で入るから、その時に注文した物を補充してくれる」
「……」
「掃除に買い物までしてもらえるなら、私がするのは食事の用意と洗濯くらいですか?」
「洗濯も、頼めばやってくれるし、食事も用意してもらえるぞ」
「食事の用意くらいさせて下さい!」
「わかった。無理だけはしないでくれ」
「わかりました」

 あまりにも行き届きすぎて、自分の役割を見つけるのに必死だ。
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