突然シンデレラ～王子様は実在しました～

　車で連れて来られたのは、都会の真ん中とは思えない自然豊かなお庭のある一軒のレストラン。洋館が雪哉さんのイメージにピッタリで、舞踏会にでも連れて来られたのかと勘違いするほどだ。十二時になったら魔法が解けるのではないかと不安になるほど、童話の世界へ入り込んだ気持ちになる。

「素敵～」
「気に入っていただけたようで。姫、お手を」

　冗談めかした口調で言われても、スーツを着た雪哉さんは本物の王子様にしか見えない。ドキドキしながら手を差し出した。洋館までエスコートされて歩くだけで、フワフワとした気持ちになる。卒業した喜びを忘れてしまいそうだ。

「宇田川様、いらっしゃいませ」
「こんにちは、よろしくお願いします」
「こちらこそ、奥様の大切な記念の日に当店をお選びいただき光栄です。ご卒業おめでとうございます」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」

　素敵な店内の真ん中にある階段を上り、二階の席に案内された。二階からは吹き抜けの店内を見下ろせて開放感がある。窓からは手入れされたお庭が一望でき、見惚れてしまう。