突然シンデレラ~王子様は実在しました~
 部屋の中は、私には今まで縁がなかった豪華な部屋で、思わずキョロキョロしてしまう。

 そんな私の様子を見て、雪哉さんが笑いを堪えているのだ。

「笑いたかったら我慢せずに笑ってくれていいから!」

 思わず素で突っ込んでしまうほど、肩を震わせて我慢している。

「ふはっ、すまない。あまりにも可愛くて」
「可愛いといわれるようなことはしてませんが……。それよりここは?」
「このホテルのスイートだ。せっかくの希々の卒業祝いなんだから、思い出に残る部屋がいいと思って」

 確かに、とんでもないインパクトで、何年経っても今日のことは忘れないだろう。

「なあ、希々」

 急に声のトーンが真剣なものになった。何を言われるのだろうと、思わず身構える。

「学生生活も終わって、春から社会人だ」
「はい」
「大人になることだし、俺達の関係も一歩先へ進まないか?」
「え⁇」

 この時、私は雪哉さんの言葉の意味を、一ミリも理解していなかった。

「嫌か?」
「えっと……」
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