突然シンデレラ~王子様は実在しました~
「いい匂いだな」
「今日は鮭のホイル焼きと肉じゃがなの」
「運ぶの手伝うよ」
「うん、ありがとう」

 自然なやり取りに思わず笑みがもれる。

「ん? どうした?」
「ううん。幸せだなって……」
「俺もだ」

 いつもの優しい顔で微笑んでくれて、少し安心した。

「「いただきます」」

 二人の静かな空間が心地良い。

「仕事はどうだ?」
「毎日が楽しくて」
「それはいいことだな。恭二に不満があったら俺に言えよ」
「ふふっ、はい」

 そんな他愛のない会話が続いていたが、雪哉さんが意を決したように私を見た。

「希々」
「はい」
「大事な話があるんだ」

 雪哉さんの表情から良くないことだとわかる。

「お義父さんのことだ」
「父のこと……」
「ああ」

 言い淀む様子に、最悪の事態なのだと理解した。

「宇田川物産の業績が良くないことは?」
「もちろん知っています。私と結婚したからと言って安泰ではないと、雪哉さんが言っていたのも覚えてます」

 緊迫した内容だけに、しゃべり方も戻ってしまう。
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