その婚約破棄、巻き込まないでください
【本編】
悪党に相談をしてしまいました
私、ミントはたしかに公爵令嬢アナベル様から嫌がらせを受けております。
たとえば、お知り合いになった侯爵令嬢からお茶会のお誘いを受けたとき。
断るのも角が立つのではと、顔だけ出すつもりで向かったところ、お屋敷の前で鉢合わせしたアナベル様に居丈高に言われたのです。
――あなたのような下級貴族が来るような場では無いわ。惨めな思いをする前に立ち去りなさい。
それは、公爵家と男爵家という家格の違いからくる「下級貴族の分際で、立場をわきまえなさい」という「わからせ」案件であり、このこと以外にも私はたびたびアナベル様に「身の程を知りなさい」とばかりに追い払われることがありました。
このアナベル様からの度重なる「わからせ」に私が少々悩んでいたのは事実ですが、それはアナベル様の婚約者であるジェームズ第二王子とは一切関係のない出来事です。
私からジェームズ殿下に助けを求めたという事実も、誓ってありません。
身の程をわきまえない解決方法に訴えたところで、事態が悪化するのは目に見えているからです。
しかし、そんな私の洞察を無にしてくれる相手がいます。
当のジェームズ殿下です。
「ミント嬢。アナベルに何をされたか、私に詳細を語ってもらえないだろうか。悪いようにはしない。私の婚約者であるアナベルが弱いものいじめをしているというのなら、私にはそれを止める責務がある。そのためには君の証言がいる。言ってほしい。何をされたのだろうか。ひどい目に遭ってるという噂は、本当なのか?」
ひとたび顔を合わせようものなら、熱烈にかき口説くが如く、距離を詰めてくるのです。
(冗談ではありません……ッ!!)
素直にこの申し出を受けて、殿下について行った時に何が起きるか、さすがにわからない者はいないでしょう。
あっという間にアナベル様に「分不相応の野心で王子に近づいた悪女+女の色香に負けたクズ王子」とセットで責められ、殿下はともかく私の側はお家取り潰し国外追放もしくは処刑級の断罪にまで追い込まれるに決まっています。
だから今日も、私はお二人から逃げるのです。
* * *
たとえば、お知り合いになった侯爵令嬢からお茶会のお誘いを受けたとき。
断るのも角が立つのではと、顔だけ出すつもりで向かったところ、お屋敷の前で鉢合わせしたアナベル様に居丈高に言われたのです。
――あなたのような下級貴族が来るような場では無いわ。惨めな思いをする前に立ち去りなさい。
それは、公爵家と男爵家という家格の違いからくる「下級貴族の分際で、立場をわきまえなさい」という「わからせ」案件であり、このこと以外にも私はたびたびアナベル様に「身の程を知りなさい」とばかりに追い払われることがありました。
このアナベル様からの度重なる「わからせ」に私が少々悩んでいたのは事実ですが、それはアナベル様の婚約者であるジェームズ第二王子とは一切関係のない出来事です。
私からジェームズ殿下に助けを求めたという事実も、誓ってありません。
身の程をわきまえない解決方法に訴えたところで、事態が悪化するのは目に見えているからです。
しかし、そんな私の洞察を無にしてくれる相手がいます。
当のジェームズ殿下です。
「ミント嬢。アナベルに何をされたか、私に詳細を語ってもらえないだろうか。悪いようにはしない。私の婚約者であるアナベルが弱いものいじめをしているというのなら、私にはそれを止める責務がある。そのためには君の証言がいる。言ってほしい。何をされたのだろうか。ひどい目に遭ってるという噂は、本当なのか?」
ひとたび顔を合わせようものなら、熱烈にかき口説くが如く、距離を詰めてくるのです。
(冗談ではありません……ッ!!)
素直にこの申し出を受けて、殿下について行った時に何が起きるか、さすがにわからない者はいないでしょう。
あっという間にアナベル様に「分不相応の野心で王子に近づいた悪女+女の色香に負けたクズ王子」とセットで責められ、殿下はともかく私の側はお家取り潰し国外追放もしくは処刑級の断罪にまで追い込まれるに決まっています。
だから今日も、私はお二人から逃げるのです。
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