EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「随分、ゴタゴタしてたみたいね」
舞子の部屋に着くなり、不機嫌そうに言われ、あたしは肩をすくめた。
「……ごめん」
「まあ、今のところ大丈夫なの?」
「うん。……たぶん、今までの人とは違うと思う」
すると、舞子は眉を寄せた。
「悪いけど、アンタのそれ信じられないからね」
あたしは、バツが悪くなり、視線をそらした。
付き合う男が変わる度、今度こそ、と、言ってきたのだから。
舞子は、ベッドに座ると、いつものように足をマッサージしながら、突っ立っているあたしを見上げた。
「まあ、事情は、アキからも聞いてるけど……他にも妙なヤツに目ェつけられたみたいだって?」
――"他"?
「た、高根さんは、妙じゃないわよ!」
すぐに彼が浮かび、あたしは、思わず声を荒らげてしまった。
秋成さんが会ったのは、彼くらいだ。
目を丸くした舞子は、次には眉を寄せる。
「――……ちょっと、アンタ……今度は三角関係とか言わないわよね」
「――え」
「その部長は、アンタに一目惚れとかって言ってたんでしょ。でも、アンタは、その、高根、ってヤツの事――」
舞子の言いたい事がわかり、あたしは、思い切り首を振った。
「ちっ……違うわよ!――高根さんは、仕事相手で……すごく真剣にあたしに向き合ってくれているの。その姿勢は、尊敬できる」
――でも、それだけ。
彼が、どんなに、あたしを気に入ってくれたとしても――今のあたしには、朝日さんがいる。
舞子は、あたしを見上げると、大きく息を吐いた。
「……まあ、今は、ね。――それが、恋愛感情にならないとも言えないんだから、注意しなさいよ」
「……舞子、何か、言い方意地悪」
元々、口が悪い方だったけど、今日は何だかとげとげしい。
あたしがそう言うと、舞子は、ふい、と、顔をそらした。
「――……何よ、それ。アタシは、ずっと心配してたんだけど。アンタ、何の音沙汰も無かったじゃない」
「……舞子」
ふてくされて、舞子はそのまま、あたしに背を向けてベッドに倒れ込んだ。
思わず口元が上がるのは、許してほしい。
あたしは、ベッドのそばに座ると、舞子に言った。
「――ありがと。……いつも、心配してくれて」
「……アンタには、あたし以上に幸せになってもらわないと困るのよ」
ごまかすように返す舞子の耳は、ほんのり赤い。
「うん。でも、あたしは、舞子には、秋成さんと幸せになってほしいと思ってるから」
「――当然じゃない。……一応、プロポーズされてるし」
「え」
あたしは、何気なく言われた言葉に、目を丸くした。
「えぇ!!??」
「え、じゃないわよ。……だから、アンタが落ち着いたら言おうと思ってたのに……」
「え、お、おめでと!ああ、じゃあ、だから同棲するってなったんだ」
「――まあね。……結婚して、一緒に暮らし始めてから、何か違うってなったら、お互い嫌じゃない」
舞子は、機嫌を直したのか――元々、不機嫌な振りをしていたのかはわからないけれど――あたしに振り返った。
あたしは、うなづくと、舞子の手を取る。
「……うん、そっか。……そっかぁ……」
何だか、感慨深い。
舞子とは、中学一年の時からの仲だ。
その彼女が――結婚。
親のような心境で、寂しさと、うれしさを感じる。
舞子は起き上がると、あたしをそっと抱き締めた。
「……舞子?」
「――……だから……アンタが幸せになってもらわないと、アタシは、安心してアキと結婚できないの」
「ちょっと……責任重大じゃない」
「そう。――……だからさ、もう、ダメ男作らないでよね」
クスクスと笑いながら、舞子は言う。
「……うん」
あたしは、うなづくと、彼女を抱き締め返した。
「――……今度は……今度こそは……大丈夫だから……」
そして、そう、自分に言い聞かせるように、舞子に告げた。
舞子の部屋に着くなり、不機嫌そうに言われ、あたしは肩をすくめた。
「……ごめん」
「まあ、今のところ大丈夫なの?」
「うん。……たぶん、今までの人とは違うと思う」
すると、舞子は眉を寄せた。
「悪いけど、アンタのそれ信じられないからね」
あたしは、バツが悪くなり、視線をそらした。
付き合う男が変わる度、今度こそ、と、言ってきたのだから。
舞子は、ベッドに座ると、いつものように足をマッサージしながら、突っ立っているあたしを見上げた。
「まあ、事情は、アキからも聞いてるけど……他にも妙なヤツに目ェつけられたみたいだって?」
――"他"?
「た、高根さんは、妙じゃないわよ!」
すぐに彼が浮かび、あたしは、思わず声を荒らげてしまった。
秋成さんが会ったのは、彼くらいだ。
目を丸くした舞子は、次には眉を寄せる。
「――……ちょっと、アンタ……今度は三角関係とか言わないわよね」
「――え」
「その部長は、アンタに一目惚れとかって言ってたんでしょ。でも、アンタは、その、高根、ってヤツの事――」
舞子の言いたい事がわかり、あたしは、思い切り首を振った。
「ちっ……違うわよ!――高根さんは、仕事相手で……すごく真剣にあたしに向き合ってくれているの。その姿勢は、尊敬できる」
――でも、それだけ。
彼が、どんなに、あたしを気に入ってくれたとしても――今のあたしには、朝日さんがいる。
舞子は、あたしを見上げると、大きく息を吐いた。
「……まあ、今は、ね。――それが、恋愛感情にならないとも言えないんだから、注意しなさいよ」
「……舞子、何か、言い方意地悪」
元々、口が悪い方だったけど、今日は何だかとげとげしい。
あたしがそう言うと、舞子は、ふい、と、顔をそらした。
「――……何よ、それ。アタシは、ずっと心配してたんだけど。アンタ、何の音沙汰も無かったじゃない」
「……舞子」
ふてくされて、舞子はそのまま、あたしに背を向けてベッドに倒れ込んだ。
思わず口元が上がるのは、許してほしい。
あたしは、ベッドのそばに座ると、舞子に言った。
「――ありがと。……いつも、心配してくれて」
「……アンタには、あたし以上に幸せになってもらわないと困るのよ」
ごまかすように返す舞子の耳は、ほんのり赤い。
「うん。でも、あたしは、舞子には、秋成さんと幸せになってほしいと思ってるから」
「――当然じゃない。……一応、プロポーズされてるし」
「え」
あたしは、何気なく言われた言葉に、目を丸くした。
「えぇ!!??」
「え、じゃないわよ。……だから、アンタが落ち着いたら言おうと思ってたのに……」
「え、お、おめでと!ああ、じゃあ、だから同棲するってなったんだ」
「――まあね。……結婚して、一緒に暮らし始めてから、何か違うってなったら、お互い嫌じゃない」
舞子は、機嫌を直したのか――元々、不機嫌な振りをしていたのかはわからないけれど――あたしに振り返った。
あたしは、うなづくと、舞子の手を取る。
「……うん、そっか。……そっかぁ……」
何だか、感慨深い。
舞子とは、中学一年の時からの仲だ。
その彼女が――結婚。
親のような心境で、寂しさと、うれしさを感じる。
舞子は起き上がると、あたしをそっと抱き締めた。
「……舞子?」
「――……だから……アンタが幸せになってもらわないと、アタシは、安心してアキと結婚できないの」
「ちょっと……責任重大じゃない」
「そう。――……だからさ、もう、ダメ男作らないでよね」
クスクスと笑いながら、舞子は言う。
「……うん」
あたしは、うなづくと、彼女を抱き締め返した。
「――……今度は……今度こそは……大丈夫だから……」
そして、そう、自分に言い聞かせるように、舞子に告げた。