EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
アパートのそばの道路に停めた車に近づくと、朝日さんは、待ち構えたように降りてきた。
「――具合は」
「あ、だ、大丈夫……です……」
すると、一瞬だけ、表情が和らいだ。
どうやら、だいぶ、心配をかけたらしい。
「……あの……」
「何だ」
「……ごめんなさい……。……勝手に……」
「それについては、後で聞く。まず、部屋に帰るぞ。泊まる準備なんか、してなかっただろう」
そう言って、朝日さんはあたしを見やる。
確かに、昨日の仕事用の服のままだ。
あたしは、うなづくと、彼にうながされるまま、助手席に乗り込んだ。
お互いの気配をうかがいながら、無言でマンションまでたどり着く。
だが、部屋に入るなり、後ろから抱き締められた。
「あ、朝日さん?」
「……あんまり、心配かけるな」
「……ごめんなさい……」
あたしは、彼の手を取り、うつむいた。
「……何か……昨日は、朝日さんに八つ当たりしそうだったから……」
「――え?」
昨夜、舞子と話した事で、気持ちがだいぶ落ち着いたようだ。
何の抵抗も無く、口からこぼれた。
「……あたしの仕事だったのに……朝日さん、あっさりと、フォローしてたから……何か、あたし、必要じゃないんだって思っちゃって……」
すると、耳元に彼の吐息を感じ、心臓が跳ねる。
「――……そうか……悪かったな。……だが、オレも、そんな簡単にできた訳じゃない。お前のメモと資料で、どうにか取り繕えただけだ」
「――……え」
あたしは、朝日さんを振り返る。
「……そう、なんですか?」
「そうだ。――ちゃんと、お前の仕事だ」
「……そっか……」
何だか、安心してしまった。
それは――朝日さんの言葉だから。
――……ああ、そうか。
――……あたし……この人を、信頼してるんだ……。
あたしは、そっと、彼に抱き着いた。
「美里……?」
「ありがとうございます。……何か、ホッとしちゃった……」
「――大丈夫だ。……お前は、必要な人間だからな」
そう言うと、朝日さんは、軽くキスを落とす。
「朝日さん」
「お前がいなきゃ、企画は進まない。――だから、自信を持て」
言いながら、再びキスをすると、彼は名残惜しそうにあたしを離した。
「……二日連続で遅刻はマズい」
あたしは、クスリ、と、笑うと、うなづいた。
「……そうですね」
お互いに笑い合うと、あたしは、支度をするために自分の部屋に入った。
ひとまず、昨日着ていたものは、すべて着替えて、出勤の準備。
洗濯は時間が無いので、帰ってからにしよう。
すると、部屋のドアが軽くノックされた。
「美里、弁当どうする?」
「え、あ……」
あたしは、一瞬迷う。
スマホを手に取って時間を見れば、電車の時間ギリギリだ。
「美里?入るぞ」
返事が無いままのあたしを不審に思ったのか、朝日さんはドアを開けた。
「あ、あの、朝日さん……」
「――中身が一緒じゃなかったら、いいのか」
「え?」
一瞬、質問の中身がわからず、あたしはキョトンとしてしまった。
「……サンドウィッチくらいなら、すぐにできるぞ」
「――あ」
あたしは、自分の言葉を思い出す。
確かに、中身が一緒だと嫌だと言ってしまった。
そんなコトまで覚えているなんて――。
「美里?」
「……いえ、あの……お願いしてもいいですか」
あたしが、朝日さんを見上げて言うと、彼は目を丸くし、そして視線をそらした。
「……朝日さん?」
「――……いや……妙に素直だったから……」
少しだけ、うれしそうな雰囲気で言うので、あたしの胸の奥は、むずかゆくなってしまった。
「……別に……いつでも意地張ってる訳じゃありません」
「そうなのか?」
朝日さんは、そう言って、クスリ、と、笑いかける。
その幼さの残る笑顔に固まっている間に、彼はドアを閉めるとキッチンへ向かって行ったようだ。
――……ヤバイ。
……かわいい……かも……。
あたしは、自分の顔が熱を持っているのを感じ、慌てて首を振った。
今は、それどころじゃない。
出勤準備をしている間に、朝日さんは、簡単にサンドウィッチを二つ作り、あたしに手渡してくれた。
「本当に、簡単だぞ」
「いえ、構いません。ありがとうございます」
「……本当に、どうした。まだ、熱があるか?」
「……朝日さん、失礼!」
あたしだって、ちゃんと素直な時もあるんだから。
彼をジロリとにらむと、玄関に向かい、パンプスに足を入れる。
「悪かった。――……素直なお前もかわいい」
「――……ッ‼」
すると、後ろから囁かれ、あたしは、その場にへたり込んでしまった。
――ああ、もう!
自分の身体が、彼の声に過剰に反応してしまい、思わず顔を伏せる。
「大丈夫か?また、乗って行くか」
「いえ!電車で行きますから!」
真っ赤になっているだろう顔をそらし、あたしは、先に玄関を出た。
「――具合は」
「あ、だ、大丈夫……です……」
すると、一瞬だけ、表情が和らいだ。
どうやら、だいぶ、心配をかけたらしい。
「……あの……」
「何だ」
「……ごめんなさい……。……勝手に……」
「それについては、後で聞く。まず、部屋に帰るぞ。泊まる準備なんか、してなかっただろう」
そう言って、朝日さんはあたしを見やる。
確かに、昨日の仕事用の服のままだ。
あたしは、うなづくと、彼にうながされるまま、助手席に乗り込んだ。
お互いの気配をうかがいながら、無言でマンションまでたどり着く。
だが、部屋に入るなり、後ろから抱き締められた。
「あ、朝日さん?」
「……あんまり、心配かけるな」
「……ごめんなさい……」
あたしは、彼の手を取り、うつむいた。
「……何か……昨日は、朝日さんに八つ当たりしそうだったから……」
「――え?」
昨夜、舞子と話した事で、気持ちがだいぶ落ち着いたようだ。
何の抵抗も無く、口からこぼれた。
「……あたしの仕事だったのに……朝日さん、あっさりと、フォローしてたから……何か、あたし、必要じゃないんだって思っちゃって……」
すると、耳元に彼の吐息を感じ、心臓が跳ねる。
「――……そうか……悪かったな。……だが、オレも、そんな簡単にできた訳じゃない。お前のメモと資料で、どうにか取り繕えただけだ」
「――……え」
あたしは、朝日さんを振り返る。
「……そう、なんですか?」
「そうだ。――ちゃんと、お前の仕事だ」
「……そっか……」
何だか、安心してしまった。
それは――朝日さんの言葉だから。
――……ああ、そうか。
――……あたし……この人を、信頼してるんだ……。
あたしは、そっと、彼に抱き着いた。
「美里……?」
「ありがとうございます。……何か、ホッとしちゃった……」
「――大丈夫だ。……お前は、必要な人間だからな」
そう言うと、朝日さんは、軽くキスを落とす。
「朝日さん」
「お前がいなきゃ、企画は進まない。――だから、自信を持て」
言いながら、再びキスをすると、彼は名残惜しそうにあたしを離した。
「……二日連続で遅刻はマズい」
あたしは、クスリ、と、笑うと、うなづいた。
「……そうですね」
お互いに笑い合うと、あたしは、支度をするために自分の部屋に入った。
ひとまず、昨日着ていたものは、すべて着替えて、出勤の準備。
洗濯は時間が無いので、帰ってからにしよう。
すると、部屋のドアが軽くノックされた。
「美里、弁当どうする?」
「え、あ……」
あたしは、一瞬迷う。
スマホを手に取って時間を見れば、電車の時間ギリギリだ。
「美里?入るぞ」
返事が無いままのあたしを不審に思ったのか、朝日さんはドアを開けた。
「あ、あの、朝日さん……」
「――中身が一緒じゃなかったら、いいのか」
「え?」
一瞬、質問の中身がわからず、あたしはキョトンとしてしまった。
「……サンドウィッチくらいなら、すぐにできるぞ」
「――あ」
あたしは、自分の言葉を思い出す。
確かに、中身が一緒だと嫌だと言ってしまった。
そんなコトまで覚えているなんて――。
「美里?」
「……いえ、あの……お願いしてもいいですか」
あたしが、朝日さんを見上げて言うと、彼は目を丸くし、そして視線をそらした。
「……朝日さん?」
「――……いや……妙に素直だったから……」
少しだけ、うれしそうな雰囲気で言うので、あたしの胸の奥は、むずかゆくなってしまった。
「……別に……いつでも意地張ってる訳じゃありません」
「そうなのか?」
朝日さんは、そう言って、クスリ、と、笑いかける。
その幼さの残る笑顔に固まっている間に、彼はドアを閉めるとキッチンへ向かって行ったようだ。
――……ヤバイ。
……かわいい……かも……。
あたしは、自分の顔が熱を持っているのを感じ、慌てて首を振った。
今は、それどころじゃない。
出勤準備をしている間に、朝日さんは、簡単にサンドウィッチを二つ作り、あたしに手渡してくれた。
「本当に、簡単だぞ」
「いえ、構いません。ありがとうございます」
「……本当に、どうした。まだ、熱があるか?」
「……朝日さん、失礼!」
あたしだって、ちゃんと素直な時もあるんだから。
彼をジロリとにらむと、玄関に向かい、パンプスに足を入れる。
「悪かった。――……素直なお前もかわいい」
「――……ッ‼」
すると、後ろから囁かれ、あたしは、その場にへたり込んでしまった。
――ああ、もう!
自分の身体が、彼の声に過剰に反応してしまい、思わず顔を伏せる。
「大丈夫か?また、乗って行くか」
「いえ!電車で行きますから!」
真っ赤になっているだろう顔をそらし、あたしは、先に玄関を出た。