EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
昨日提出した書類は、ほぼ修正無しで、社長の元へ提出された。
あたしは、それに心から安堵する。
まったく、畑違いの仕事なのだ。不安だらけなのは当然。
「白山」
すると、朝日さんに呼ばれ、にらめっこしていたパソコンから顔を上げる。
立ち上がり、彼の元に向かうと、少しだけ不機嫌そうに言われた。
「今度のバーベキュー大会の企画だが――それは、もう、承認済みだから、先方と詰めてくれ」
「ハ、ハイ」
「日程は、少し時間が無いが……七月末の土曜日――で、良いんだな」
「ハイ」
あたしが、うなづくと、朝日さんは、パソコンを見やった。
「最低催行人数は」
「高根さんからは、二桁以上であれば可能と」
「了解」
「備品、食材等、完全に任せっきりで本当にいいんだな」
「ハイ。契約条件に入っております」
「――なら、総務からの通達で、全員閲覧可能枠にメール頼んだ。ただし、今回は本社エリアのみで開催と加えておけ」
「承知しました」
淡々としたやり取りを終え、あたしは、席に戻る。
すると、後ろから、のぞき見られる気配を感じ、振り返った。
「……何でしょうか、小坂主任?」
ヘルプマークは、今日は無かったと思うんだけど。
少しだけ眉を寄せてしまうと、彼女は、あっけらかんと言った。
「バーベキュー大会、承認出たのね?あたし達、参加するから。申し込みってどうするのかしら?」
ニコニコと言う小坂主任は、一課の方を見やった。
あたしもつられて見やると、明らかにソワソワしている数人の視線を感じた。
「……ありがとうございます。追ってメールが行きますので、必要事項入力後、返信していただければ」
「ハァイ」
どうやら、合コンの延長線のようにとらえられてしまったらしい。
少しだけ苦いものを飲み込むと、あたしは、全員が閲覧できる枠にメールを出した。
一応、社内の連絡は、会社全社員、役付き、部長以上、と、分けられている。
その、全社員向けに日程と内容を送ると、帰る頃には三十人以上の参加申し込みがあった。
そして、そのほとんどが、若い社員。
中には、家族連れの申し込みもあったほどだ。
一応、福利厚生の一環で、家族も参加OKにしたからだろう。
思った以上の反応に、目が潤みそうになるのを必死でこらえる。
――何だか、自分の仕事が報われたような気がして、胸が詰まった。
「では、最終決定で大丈夫ですね」
「ハイ、よろしくお願いします」
翌日、高根さんに連絡を入れると、すぐに、こちらに来てくれた。
先日と同じく、会議室で二人で話し合う。
彼は、バーベキュー大会の資料を見せながら、説明してくれるが、時折、あたしの反応をうかがって、疑問点を逐一つぶしてくれたのはありがたかった。
――何せ、あたしの人生、そんなリア充のようなイベントごとには、まったく縁が無かったんだから。
会場には、マイクロバス数台貸し切って向かうそうで、まずは、会社に集合する。
先に、高根さん達が準備をしてくれる手筈で、あたし達は手ぶらで向かって良いと言われている。
会社からバスで二十分ほどの、隣の市にあるキャンプ場が会場だ。
バーベキュー専用のエリアもあり、その日は、大部分を貸切る予定になった。
「一般の方達もいらっしゃるので、そこはご注意ください。毎回、何かしら大なり小なりトラブルがあるので」
あたしは、真剣にうなづく。そんなコトで、会社のイメージが悪くなったら、たまったモンじゃない。
「承知しました。注意事項のトップに据えておきます」
すると、高根さんは、幼い笑顔をあたしに向けた。
「ありがとうございます。――頼りにしています」
「こちらこそ」
あたしも、つられて笑顔になった。
どうも、この人には、警戒心が薄れてしまう。
「――それで、ですね」
すると、一気に口調が真剣なものに変わり、あたしは表情を引き締めた。
あたしは、それに心から安堵する。
まったく、畑違いの仕事なのだ。不安だらけなのは当然。
「白山」
すると、朝日さんに呼ばれ、にらめっこしていたパソコンから顔を上げる。
立ち上がり、彼の元に向かうと、少しだけ不機嫌そうに言われた。
「今度のバーベキュー大会の企画だが――それは、もう、承認済みだから、先方と詰めてくれ」
「ハ、ハイ」
「日程は、少し時間が無いが……七月末の土曜日――で、良いんだな」
「ハイ」
あたしが、うなづくと、朝日さんは、パソコンを見やった。
「最低催行人数は」
「高根さんからは、二桁以上であれば可能と」
「了解」
「備品、食材等、完全に任せっきりで本当にいいんだな」
「ハイ。契約条件に入っております」
「――なら、総務からの通達で、全員閲覧可能枠にメール頼んだ。ただし、今回は本社エリアのみで開催と加えておけ」
「承知しました」
淡々としたやり取りを終え、あたしは、席に戻る。
すると、後ろから、のぞき見られる気配を感じ、振り返った。
「……何でしょうか、小坂主任?」
ヘルプマークは、今日は無かったと思うんだけど。
少しだけ眉を寄せてしまうと、彼女は、あっけらかんと言った。
「バーベキュー大会、承認出たのね?あたし達、参加するから。申し込みってどうするのかしら?」
ニコニコと言う小坂主任は、一課の方を見やった。
あたしもつられて見やると、明らかにソワソワしている数人の視線を感じた。
「……ありがとうございます。追ってメールが行きますので、必要事項入力後、返信していただければ」
「ハァイ」
どうやら、合コンの延長線のようにとらえられてしまったらしい。
少しだけ苦いものを飲み込むと、あたしは、全員が閲覧できる枠にメールを出した。
一応、社内の連絡は、会社全社員、役付き、部長以上、と、分けられている。
その、全社員向けに日程と内容を送ると、帰る頃には三十人以上の参加申し込みがあった。
そして、そのほとんどが、若い社員。
中には、家族連れの申し込みもあったほどだ。
一応、福利厚生の一環で、家族も参加OKにしたからだろう。
思った以上の反応に、目が潤みそうになるのを必死でこらえる。
――何だか、自分の仕事が報われたような気がして、胸が詰まった。
「では、最終決定で大丈夫ですね」
「ハイ、よろしくお願いします」
翌日、高根さんに連絡を入れると、すぐに、こちらに来てくれた。
先日と同じく、会議室で二人で話し合う。
彼は、バーベキュー大会の資料を見せながら、説明してくれるが、時折、あたしの反応をうかがって、疑問点を逐一つぶしてくれたのはありがたかった。
――何せ、あたしの人生、そんなリア充のようなイベントごとには、まったく縁が無かったんだから。
会場には、マイクロバス数台貸し切って向かうそうで、まずは、会社に集合する。
先に、高根さん達が準備をしてくれる手筈で、あたし達は手ぶらで向かって良いと言われている。
会社からバスで二十分ほどの、隣の市にあるキャンプ場が会場だ。
バーベキュー専用のエリアもあり、その日は、大部分を貸切る予定になった。
「一般の方達もいらっしゃるので、そこはご注意ください。毎回、何かしら大なり小なりトラブルがあるので」
あたしは、真剣にうなづく。そんなコトで、会社のイメージが悪くなったら、たまったモンじゃない。
「承知しました。注意事項のトップに据えておきます」
すると、高根さんは、幼い笑顔をあたしに向けた。
「ありがとうございます。――頼りにしています」
「こちらこそ」
あたしも、つられて笑顔になった。
どうも、この人には、警戒心が薄れてしまう。
「――それで、ですね」
すると、一気に口調が真剣なものに変わり、あたしは表情を引き締めた。