EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
気まずそうに、こちらをうかがってくる高根さんに、あたしは尋ねた。
「……何でしょうか」
「できれば、ですが……担当者である白山さんに、一緒に下見とか、していただけないかと思いまして……」
あたしは、一瞬、拍子抜けしてしまった。
あまりにも深刻そうに言うものだから、何か重大な事なのかと思ったのに。
あたしは、すぐにうなづいた。
「承知しました。いつでしょうか」
「……ご都合が良ければ、今日にでも」
「え」
――それは……急すぎる。
戸惑うあたしに、高根さんは続けた。
「で、ですよね。すみません。――ただ、僕、来週以降、他社の企画にかかりっきりになってしまうんで……今日しか時間が取れなくて。あまり、直近になって、というのも、マズいかと思ったんですけど……」
まくし立てるように言うと、彼は頭を下げた。
「それに、担当者さんまでが何も知らないというのも、こちらとしては困りますので……」
確かに、あたしが担当なんだから、責任はあたしにある。
知りませんでした、じゃ、済まない事だって出てくるかもしれない。
「……承知しました。上司に確認してまいりますので、少々お待ちください」
あたしは、そう言って席を立つと、総務部の部屋に戻った。
朝日さんの席を見やれば、他の社員と話している。
それが終わるのを待ち、彼の視線があたしに向けられたところで、席に行った。
「部長、よろしいでしょうか」
「どうした」
「高根さんから、これから、現場の下見に来てほしいとの要望がありましたが、可能でしょうか」
「――下見?」
朝日さんは、眉を寄せる。
だが、あたしが、先ほど言われた高根さんの話を伝えると、腕組みをしながらもうなづいた。
「――……まあ、それもそうか。だが、それは、どうしても今日じゃないとダメなのか?」
「高根さんは、来週から他社の企画で動けないそうです」
彼だって、ウチの専属な訳じゃない。
他の会社からの仕事だってあるのだ。
朝日さんは、マウスを動かし、何かを確認すると立ち上がった。
「――オレも行く」
「え」
あたしは、目を丸くして固まってしまった。
そんなあたしにかまわず、彼はスタスタと部屋を出て行く。
「ぶ、部長!」
慌てるあたしを、物珍しそうに周りが見るが、今は気にしていられない。
――何で、アンタが行くのよ!
あたしの仕事、取られてたまるか!
彼のあとに続き部屋を出ると、会議室に飛び込むように入る。
「部長!」
すると、既に二人は対峙していて、高根さんは、あたしの方へ、気まずそうに視線を向けた。
「……では、午後一時、正面玄関に車を回しますので」
彼はそう言って、朝日さんに頭を下げる。
「――よろしくお願いします」
お互いに頭を下げると、高根さんは、机の上の資料をバッグに片付け始めた。
――……一体、何なのよ!
動揺しているあたしを、朝日さんは振り返る。
「白山、オレのスケジュール、午後から空きが作られそうだったからな。少し融通してもらった」
「……あ、あの……」
「で、では、準備がありますので、一旦失礼させていただきます」
高根さんは、そんなあたし達を見やると、頭を下げて会議室を出て行こうとする。
「あ、し、下までご一緒します」
「いえ、またお会いしますので、ここで結構ですよ」
笑顔で返す彼に、申し訳無さを感じてしまう。
そして、ドアが閉まり、あたしは、朝日さんを振り返ってにらんだ。
「――……どういうつもりですか」
「どういう、とは」
お互いに会社仕様で向き合う。
「……担当者はあたしです。部長にお出でいただくまでも無いかと」
「会社として、初の試みなんだ。上が、何も知りません、が通用する訳無いだろう」
あくまで、上司として出張るというのか。
あたしは、ふてくされそうになり、彼に背を向けた。
「――……承知しました。戻りま……」
すると、不意に後ろから抱き締められる。
「あ、朝日さ……っ……!」
思わず名前を呼んでしまい、口をふさぐ。
だが、そんなあたしにかまわず、彼は耳元で言った。
「――仕事だろうが、自分の彼女を、他の男と二人きりにさせてたまるか」
「……っ……‼」
完全に公私混同じゃない!
あたしは、朝日さんを振り返り、にらみつける。
「仕事ですよ」
「それでも、だ」
言いながら、彼は軽くキスを落とす。
「……バッ……!」
「オレが重いのは、承知済みだろう?」
「……朝日さんのバカ!」
あたしは、小声で怒鳴りつけた。
――束縛系、ってヤツ?
舞子の言葉が脳裏をよぎる。
――けれど、心のどこかで……うれしさを感じてしまうのは、やっぱり、あたしも朝日さんが好きだってコトなんだろうか……。
「……何でしょうか」
「できれば、ですが……担当者である白山さんに、一緒に下見とか、していただけないかと思いまして……」
あたしは、一瞬、拍子抜けしてしまった。
あまりにも深刻そうに言うものだから、何か重大な事なのかと思ったのに。
あたしは、すぐにうなづいた。
「承知しました。いつでしょうか」
「……ご都合が良ければ、今日にでも」
「え」
――それは……急すぎる。
戸惑うあたしに、高根さんは続けた。
「で、ですよね。すみません。――ただ、僕、来週以降、他社の企画にかかりっきりになってしまうんで……今日しか時間が取れなくて。あまり、直近になって、というのも、マズいかと思ったんですけど……」
まくし立てるように言うと、彼は頭を下げた。
「それに、担当者さんまでが何も知らないというのも、こちらとしては困りますので……」
確かに、あたしが担当なんだから、責任はあたしにある。
知りませんでした、じゃ、済まない事だって出てくるかもしれない。
「……承知しました。上司に確認してまいりますので、少々お待ちください」
あたしは、そう言って席を立つと、総務部の部屋に戻った。
朝日さんの席を見やれば、他の社員と話している。
それが終わるのを待ち、彼の視線があたしに向けられたところで、席に行った。
「部長、よろしいでしょうか」
「どうした」
「高根さんから、これから、現場の下見に来てほしいとの要望がありましたが、可能でしょうか」
「――下見?」
朝日さんは、眉を寄せる。
だが、あたしが、先ほど言われた高根さんの話を伝えると、腕組みをしながらもうなづいた。
「――……まあ、それもそうか。だが、それは、どうしても今日じゃないとダメなのか?」
「高根さんは、来週から他社の企画で動けないそうです」
彼だって、ウチの専属な訳じゃない。
他の会社からの仕事だってあるのだ。
朝日さんは、マウスを動かし、何かを確認すると立ち上がった。
「――オレも行く」
「え」
あたしは、目を丸くして固まってしまった。
そんなあたしにかまわず、彼はスタスタと部屋を出て行く。
「ぶ、部長!」
慌てるあたしを、物珍しそうに周りが見るが、今は気にしていられない。
――何で、アンタが行くのよ!
あたしの仕事、取られてたまるか!
彼のあとに続き部屋を出ると、会議室に飛び込むように入る。
「部長!」
すると、既に二人は対峙していて、高根さんは、あたしの方へ、気まずそうに視線を向けた。
「……では、午後一時、正面玄関に車を回しますので」
彼はそう言って、朝日さんに頭を下げる。
「――よろしくお願いします」
お互いに頭を下げると、高根さんは、机の上の資料をバッグに片付け始めた。
――……一体、何なのよ!
動揺しているあたしを、朝日さんは振り返る。
「白山、オレのスケジュール、午後から空きが作られそうだったからな。少し融通してもらった」
「……あ、あの……」
「で、では、準備がありますので、一旦失礼させていただきます」
高根さんは、そんなあたし達を見やると、頭を下げて会議室を出て行こうとする。
「あ、し、下までご一緒します」
「いえ、またお会いしますので、ここで結構ですよ」
笑顔で返す彼に、申し訳無さを感じてしまう。
そして、ドアが閉まり、あたしは、朝日さんを振り返ってにらんだ。
「――……どういうつもりですか」
「どういう、とは」
お互いに会社仕様で向き合う。
「……担当者はあたしです。部長にお出でいただくまでも無いかと」
「会社として、初の試みなんだ。上が、何も知りません、が通用する訳無いだろう」
あくまで、上司として出張るというのか。
あたしは、ふてくされそうになり、彼に背を向けた。
「――……承知しました。戻りま……」
すると、不意に後ろから抱き締められる。
「あ、朝日さ……っ……!」
思わず名前を呼んでしまい、口をふさぐ。
だが、そんなあたしにかまわず、彼は耳元で言った。
「――仕事だろうが、自分の彼女を、他の男と二人きりにさせてたまるか」
「……っ……‼」
完全に公私混同じゃない!
あたしは、朝日さんを振り返り、にらみつける。
「仕事ですよ」
「それでも、だ」
言いながら、彼は軽くキスを落とす。
「……バッ……!」
「オレが重いのは、承知済みだろう?」
「……朝日さんのバカ!」
あたしは、小声で怒鳴りつけた。
――束縛系、ってヤツ?
舞子の言葉が脳裏をよぎる。
――けれど、心のどこかで……うれしさを感じてしまうのは、やっぱり、あたしも朝日さんが好きだってコトなんだろうか……。