EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー

fight.24

 ぼんやりと目が開けば、あたりは薄暗くなっていて、思わず反射で起き上がった。
 そして、ハラリと落ちた布団を見下ろし、次にはすぐに隠れるように潜ってしまう。

 ――全身――見える所に、ほぼ、キスマークらしき赤い痕が見える。

 あの後、お互い無心で求め合い、あたしは、いつの間にか気を失っていたようだ。
 そんな事は――今まで無くて、思わず悶えてしまう。

「――美里、起きたのか?」

 すると、部屋のドアが開き、朝日さんが入ってくる。
 あたしは、布団から半分だけ顔を出すと、返事をしようと声を出すが――

「……ィ……」

 ――ハイ。

 そう言いたかったのに、声がかすれて、出てこない。

 ……ウソでしょ。

 朝日さんは、気まずそうに、動揺を隠さないあたしの元にやって来ると、そっと髪を撫でた。
「……悪い。……本当に、加減がわからなかった。……その……あんなに気持ち良いとは思ってなくてだな……」
 ――そんなコト、いちいち言うな!
 あたしが、真っ赤になってにらむと、彼は眉を下げた。
 その表情が、幼くて、可愛くて――拍子抜けしてしまい、思わず笑ってしまう。
「……何がおかしい」
「……ごめん……なさい……。……何、か……可愛……い」
 ようやく出てきたかすれた声で、そう告げると、朝日さんは、バツが悪そうに視線を逸らす。
「……うるさい。……それより、起きられるか?もう、夜だが……」
 ――え、うそ!
 あたしは、慌てて起き上がろうとし、すぐに我に返りベッドの中にUターン。
「美里?」
「あ、あの……着替えるから……」
 朝日さんは、言いたい事に気づいたようで、うなづいた。
「ああ。――夕飯、作ってあるから、着替えたら出て来い」
「……ハイ」
 あたしは、ドアが閉まると、ようやく、ダルい身体を起こす。
 すると、足元に、簡単に畳まれた自分の服が見え、思わず眉を寄せた。
 ――何してんの、あの男!
 おそらく、朝日さんが、投げてあった、あたしの服と下着を拾っておいたのだろう。
 本人は当然の事なんだろうけれど、こっちは、恥ずかしさしか無い。
 ふてくされながらも、手を伸ばそうとすると、下半身に力が入らない。

 ……え??

 改めて、ベッドから下りようとすると、ストン、と、へたり込んでしまう。

 ……あれ、もしかして……腰、抜けた、とかいう……ヤツ?

 それと同時に、先ほどまでの行為が脳裏によみがえり、真っ赤になって顔を伏せた。

 ……ああ、ダメだわ。
 ……あれだけ、されたら……そりゃ、なるわ。

 朝日さんが、初めてだというのは知っていたけれど、初めての男とするのは、あたしだって初めてで。
 でも、たぶん、初めてのヤツのレベルじゃないと思うんだけど。
 触れられるところ、すべてに、敏感に反応してしまった自分に苦るが、あんなに名前を呼ばれて、求められれば――当然なのかもしれない。
 ――前の男達は、みんな、かなりの数を経験していたから……正直、あたしは、いつも流されるまま。
 アイツ等が、満足して終わりで。
 でも、そんなものだと思っていたのに。
 彼の息遣いを思い出し、身体中が真っ赤になってしまう。

 ――……本当に、朝日さんには、あたしが必要なんだ……。

 そう、思わせてくれるほどの熱。

 それだけで――何だって許せるような気がした。
< 111 / 195 >

この作品をシェア

pagetop