EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
午後一番で始まった緊急会議は、夕方にようやく終了した。
総務部の部屋に戻って来た朝日さんは、少々疲れたような表情を見せたが、固唾をのんで待っていたあたしのところまで来ると、口元を上げた。
「いろいろ反対意見はあったが、最後は、社長の鶴の一声だ。二日間開催、十月に入ったら、全支社エリアで開催予定だ」
「――あ、ありがとうございます」
あたしは、お礼を言うと、立ち上がって頭を下げた。
――良かった。とにかく、高根さんに伝えないと。
「――それで、だ、白山」
すると朝日さんが、固い口調で続ける。
「お前の他に、全支社に同じような福利厚生関係の窓口を一人ずつ置く。それと、ライフプレジャー社には、各地の同じようなイベント企画会社を紹介してもらう。これだけの規模になると、お前一人の手に余るからな」
「……承知しました」
あたしは、ストン、と、イスに座る。
……じゃあ、本社だって、あたしじゃなくても良いんじゃない。
――……自分の仕事が、簡単に他人に振り分けられるものなら――もう、あたしは、必要無いんじゃない。
思わず下がった視線に気づいたのか、朝日さんは更に続けた。
「あと、社長から。夏と秋はバーベキュー大会にするとして、春と冬の企画も提出されたものを詰めてくれ、だそうだ」
「――え」
あたしは、その言葉に顔を上げる。
……それは……どういう……。
「年間の企画も提出しただろう」
「……ハ、ハイ……」
いや、アンタが出せって言ったんでしょうが。
そうは思ったが、口には出さない。
それよりも――これは、どう捉えれば良いの?
あたしの疑問に答えるように、朝日さんは続けた。
「こういうものが充実していると、社員のやる気にもつながるし、新入社員獲得のアピールにも使える。――そう、言われた。……随分、気に入ったらしいぞ」
「……え……」
これは――褒められているんだろうか……?
「じゃあ、オレからライフプレジャー社に連絡しておくから」
朝日さんは、キョトンとしているあたしに苦笑いを返し、自分の席に着くと、すぐに電話をかけた。
とにかく、話が急すぎて、頭がついていかない。
けれど――あたしの仕事が認められたのは、確かなようだ。
それは、この十年で初めての事で――落ちかけていた気分は上がった。
『では、二日間開催という事で。迅速な判断、ありがとうございました。では、その日程で調整させていただきます』
「よ、よろしくお願いします」
高根さんに連絡ついでに、朝日さんは、あたしに電話をつないでくれたので、そのまま今後の予定を決める事にした。
『それと、他の地区の同業他社の件ですが――ひとまず、社長預かりにさせてください。顔が広い人なので、心配無いとは思いますが……』
「お願いします」
あたしは、思わず受話器を持ったまま頭を下げた。
それは、切実な問題。
他の支社では、できないという事だけは避けたいのだから。
『白山さん』
「ハッ……ハイッ!」
不意に呼ばれ、あたしは、背筋を伸ばす。
それが見えたかのように、高根さんは笑った。
『ありがとうございます。――あなたのおかげで、ウチの仕事が増えました』
冗談交じりに言われ、あたしは、返事に詰まる。
……わ、悪い事じゃ……ないんだよね?
すると、すぐにフォローされた。
『恨み言じゃありませんよ。感謝です。ウチみたいな弱小企業相手に、ちゃんとした対応されてくださってるんですから』
「いえ、それは、こちらもです」
『……じゃあ、お互い様という事で』
あたしは、口元を上げて、うなづいた。
そして、来週、また打ち合わせをするとの事で、高根さんとの電話を終えたのだった。
総務部の部屋に戻って来た朝日さんは、少々疲れたような表情を見せたが、固唾をのんで待っていたあたしのところまで来ると、口元を上げた。
「いろいろ反対意見はあったが、最後は、社長の鶴の一声だ。二日間開催、十月に入ったら、全支社エリアで開催予定だ」
「――あ、ありがとうございます」
あたしは、お礼を言うと、立ち上がって頭を下げた。
――良かった。とにかく、高根さんに伝えないと。
「――それで、だ、白山」
すると朝日さんが、固い口調で続ける。
「お前の他に、全支社に同じような福利厚生関係の窓口を一人ずつ置く。それと、ライフプレジャー社には、各地の同じようなイベント企画会社を紹介してもらう。これだけの規模になると、お前一人の手に余るからな」
「……承知しました」
あたしは、ストン、と、イスに座る。
……じゃあ、本社だって、あたしじゃなくても良いんじゃない。
――……自分の仕事が、簡単に他人に振り分けられるものなら――もう、あたしは、必要無いんじゃない。
思わず下がった視線に気づいたのか、朝日さんは更に続けた。
「あと、社長から。夏と秋はバーベキュー大会にするとして、春と冬の企画も提出されたものを詰めてくれ、だそうだ」
「――え」
あたしは、その言葉に顔を上げる。
……それは……どういう……。
「年間の企画も提出しただろう」
「……ハ、ハイ……」
いや、アンタが出せって言ったんでしょうが。
そうは思ったが、口には出さない。
それよりも――これは、どう捉えれば良いの?
あたしの疑問に答えるように、朝日さんは続けた。
「こういうものが充実していると、社員のやる気にもつながるし、新入社員獲得のアピールにも使える。――そう、言われた。……随分、気に入ったらしいぞ」
「……え……」
これは――褒められているんだろうか……?
「じゃあ、オレからライフプレジャー社に連絡しておくから」
朝日さんは、キョトンとしているあたしに苦笑いを返し、自分の席に着くと、すぐに電話をかけた。
とにかく、話が急すぎて、頭がついていかない。
けれど――あたしの仕事が認められたのは、確かなようだ。
それは、この十年で初めての事で――落ちかけていた気分は上がった。
『では、二日間開催という事で。迅速な判断、ありがとうございました。では、その日程で調整させていただきます』
「よ、よろしくお願いします」
高根さんに連絡ついでに、朝日さんは、あたしに電話をつないでくれたので、そのまま今後の予定を決める事にした。
『それと、他の地区の同業他社の件ですが――ひとまず、社長預かりにさせてください。顔が広い人なので、心配無いとは思いますが……』
「お願いします」
あたしは、思わず受話器を持ったまま頭を下げた。
それは、切実な問題。
他の支社では、できないという事だけは避けたいのだから。
『白山さん』
「ハッ……ハイッ!」
不意に呼ばれ、あたしは、背筋を伸ばす。
それが見えたかのように、高根さんは笑った。
『ありがとうございます。――あなたのおかげで、ウチの仕事が増えました』
冗談交じりに言われ、あたしは、返事に詰まる。
……わ、悪い事じゃ……ないんだよね?
すると、すぐにフォローされた。
『恨み言じゃありませんよ。感謝です。ウチみたいな弱小企業相手に、ちゃんとした対応されてくださってるんですから』
「いえ、それは、こちらもです」
『……じゃあ、お互い様という事で』
あたしは、口元を上げて、うなづいた。
そして、来週、また打ち合わせをするとの事で、高根さんとの電話を終えたのだった。