EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
fight.3
そして、土曜日。
バッグの持ち手をきつく握り締め、あたしは、先週飛び出したアパートの部屋の前で立ったまま、動けずにいた。
どうにか……かなりの時間をかけて到着したは良いが、合い鍵も突き返した今、アイツにドアを開けてもらわなければならないのだ。
けれど、チャイムを押そうとする手が震え、思わず引き返したくなる。
――でも、これ以上、長引かせたら、あたしはどこにも行けない。
そう決心し、思い切りチャイムを押す。
一拍置いて、ピンポン、と、軽い音が鳴り響いた。
あたしは、飛び出しそうになる心臓を押さえながら、アイツが出てくるのを待った。
どうせ、一日引きこもっているんだろうから、いるに違いない。
そう思って待っていたが、いつまで経っても、中から動きがある感じがしない。
――……留守、って訳じゃないわよね……。
寝てる……?
あたしは、再びチャイムを押そうとした。
だが。
「美里?」
階段の方から声がして、あたしは、そちらを振り返る。
すると、アイツが、コンビニの袋を持っていて――その隣には、見覚えのある、派手な女が腕を組んであたしを見ていた。
――別れる直接のきっかけの、浮気相手だ。
「――寿和」
思わず名前がこぼれてしまったが、すぐに、気を取り直す。
「――ちょうど良かった……。……話があるの」
「ああ、オレもだ。とりあえず入ってくれよ」
すると、浮気相手は、あたしを値踏みするように見やり、寿和にしなだれかかる。
「ねぇ、トシくん、アタシはどうしたらいいの?」
「ん?別にいても良いけど。すぐ終わるし」
「そぉ?お邪魔じゃない?」
そう言って、彼女はあたしを見やる。
そこに罪悪感など、微塵も見えない。
「――構わないわ」
あたしは、それだけ言うと、寿和が鍵を開けるのを待った。
チラリと隣を見下ろせば、肉感的な身体を隠そうともしない、露出の大きい服。男受けするような、派手なメイク。
雰囲気が微妙に夜の気配がするが――キャバ嬢なのかもしれない。
そんな事をつらつらと考えてしまうのは、現実逃避。
ガチャリとドアが開き、あたし達は部屋の中に入る。
その瞬間、思わず眉をひそめてしまった。
あたしがいなくなってから――きっと、コイツは、何もしていないのだ。
そこかしこにゴミが散乱し、脱ぎ捨てた服があちらこちらに見える。
足の踏み場が無くなりかけた床の隙間を縫って、平然と二人は入って行くが、あたしはその場で立ち止まった。
「美里?」
「――……寿和……アンタ、コレ……どうしたら、こんな汚い部屋になるのよ……!」
思わずにらみつけると、寿和は、悪びれもせずに返した。
「だって、お前が帰ってこないから、片付かないんだろ」
「――……は?」
その言葉に、目の前が真っ暗になった。
――……ああ、そうか。
――……あたしは、住み込みの家政婦だったのか。
そう認識した瞬間、怒りが身体中を駆け巡る。
こんな男に――何で、あたしは……!
「いつもお前がやってたんだからさ、早く片付けろよ。ああ、メシも作っておけよ」
当然のように言われ、息ができない。
「やだ、トシくん。一応、彼女さんなんでしょ?」
不憫なものを見るような目を向けられ、あたしは、唇を噛みしめうつむいた。
「一応、な」
それだけ言うと、寿和はあたしの脇を通り過ぎて、彼女の肩を抱く。
「部屋片付くまで、遊んでくるか」
「ええー、良いのぉ?悪くない?」
甘ったるい声が、脳内を通り過ぎる。
――思ってもいないクセに。
「良いんだよ、美里は、オレのために尽くすのが幸せなんだから」
握りしめた拳を振り上げようとしたが、すんでのところで止まる。
そんなあたしに、寿和は何かを放り投げた。
足元には、出て行く時に投げつけた部屋の鍵。
「合い鍵返しておくから。帰って来たら、風呂入れるようにしておけよ」
そう言うと、寿和は彼女とともに部屋を出て行った。
バッグの持ち手をきつく握り締め、あたしは、先週飛び出したアパートの部屋の前で立ったまま、動けずにいた。
どうにか……かなりの時間をかけて到着したは良いが、合い鍵も突き返した今、アイツにドアを開けてもらわなければならないのだ。
けれど、チャイムを押そうとする手が震え、思わず引き返したくなる。
――でも、これ以上、長引かせたら、あたしはどこにも行けない。
そう決心し、思い切りチャイムを押す。
一拍置いて、ピンポン、と、軽い音が鳴り響いた。
あたしは、飛び出しそうになる心臓を押さえながら、アイツが出てくるのを待った。
どうせ、一日引きこもっているんだろうから、いるに違いない。
そう思って待っていたが、いつまで経っても、中から動きがある感じがしない。
――……留守、って訳じゃないわよね……。
寝てる……?
あたしは、再びチャイムを押そうとした。
だが。
「美里?」
階段の方から声がして、あたしは、そちらを振り返る。
すると、アイツが、コンビニの袋を持っていて――その隣には、見覚えのある、派手な女が腕を組んであたしを見ていた。
――別れる直接のきっかけの、浮気相手だ。
「――寿和」
思わず名前がこぼれてしまったが、すぐに、気を取り直す。
「――ちょうど良かった……。……話があるの」
「ああ、オレもだ。とりあえず入ってくれよ」
すると、浮気相手は、あたしを値踏みするように見やり、寿和にしなだれかかる。
「ねぇ、トシくん、アタシはどうしたらいいの?」
「ん?別にいても良いけど。すぐ終わるし」
「そぉ?お邪魔じゃない?」
そう言って、彼女はあたしを見やる。
そこに罪悪感など、微塵も見えない。
「――構わないわ」
あたしは、それだけ言うと、寿和が鍵を開けるのを待った。
チラリと隣を見下ろせば、肉感的な身体を隠そうともしない、露出の大きい服。男受けするような、派手なメイク。
雰囲気が微妙に夜の気配がするが――キャバ嬢なのかもしれない。
そんな事をつらつらと考えてしまうのは、現実逃避。
ガチャリとドアが開き、あたし達は部屋の中に入る。
その瞬間、思わず眉をひそめてしまった。
あたしがいなくなってから――きっと、コイツは、何もしていないのだ。
そこかしこにゴミが散乱し、脱ぎ捨てた服があちらこちらに見える。
足の踏み場が無くなりかけた床の隙間を縫って、平然と二人は入って行くが、あたしはその場で立ち止まった。
「美里?」
「――……寿和……アンタ、コレ……どうしたら、こんな汚い部屋になるのよ……!」
思わずにらみつけると、寿和は、悪びれもせずに返した。
「だって、お前が帰ってこないから、片付かないんだろ」
「――……は?」
その言葉に、目の前が真っ暗になった。
――……ああ、そうか。
――……あたしは、住み込みの家政婦だったのか。
そう認識した瞬間、怒りが身体中を駆け巡る。
こんな男に――何で、あたしは……!
「いつもお前がやってたんだからさ、早く片付けろよ。ああ、メシも作っておけよ」
当然のように言われ、息ができない。
「やだ、トシくん。一応、彼女さんなんでしょ?」
不憫なものを見るような目を向けられ、あたしは、唇を噛みしめうつむいた。
「一応、な」
それだけ言うと、寿和はあたしの脇を通り過ぎて、彼女の肩を抱く。
「部屋片付くまで、遊んでくるか」
「ええー、良いのぉ?悪くない?」
甘ったるい声が、脳内を通り過ぎる。
――思ってもいないクセに。
「良いんだよ、美里は、オレのために尽くすのが幸せなんだから」
握りしめた拳を振り上げようとしたが、すんでのところで止まる。
そんなあたしに、寿和は何かを放り投げた。
足元には、出て行く時に投げつけた部屋の鍵。
「合い鍵返しておくから。帰って来たら、風呂入れるようにしておけよ」
そう言うと、寿和は彼女とともに部屋を出て行った。