EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
fight.26
帰り際、あたしは、バーベキュー大会の件で、社員数人に声をかけられた。
すべて――楽しみにしている、との事で、あたしは、放心状態になりかけてしまった。
まさか、自分がそんな風に言われるなんて。
「あ、白山さんー、ちょっと待って!」
ロッカールームに向かう途中、後ろから声をかけられ、振り返れば小坂主任が急ぎ足でやってくる。
「ね、あなた、週末空いてる?」
「……は?」
「この前の、ライフプレジャー社さんと、今度は飲み会しようって話になってね!金曜の夜、前の場所で七時半、予定しておいて」
「え、ち、ちょっと待ってください!」
あれよあれよという間に決められ、あたしは慌てて止める。
――冗談じゃない!誰が行くか!
それが顔に出ていたのか、小坂主任は眉を寄せた。
「あのね、先方は取引先でしょ。特に、あなたは、直接お世話になってるんだし。企画が上手くいってるのは、あちらの人のおかげでしょう。お礼くらいしましょうよ」
でも、それは接待というものじゃ……。
そう感じてしまうが、主任は取り繕うように言った。
「嫌ね、接待とかじゃないわよ。お互いに、プライベートで会いましょうってだけ」
「じゃあ、あたしは無理です」
会社がらみでしか、そんなものには行きたくない。
それだって、できるだけ避けたいのに。
あたしは、頭を下げると、ロッカールームに入る。
けれど、主任はあきらめてはくれなかった。
「お願い!ホラ、向こうの高根さんも参加するっていうのよ。あなた、いてくれないと困るのよね」
「――それこそ、あたしが困ります」
先日の、だまし討ちのような合コンの事を、暗に言う。
「何で?この前の彼氏、別れたんでしょ?」
「――……別の人がいますので」
あたしの返しに、主任は目を丸くする。
「……え、あなた、よく、そんなに次から次へと男が寄って来るわね!ホント、コツでも教えてもらいたいわ!」
――この人は、単純に、思った事が口から出てくるタイプだ。
そうは思っていても、腹の底から湧き出てくる怒りを抑えられない。
あたしは、主任を見下ろす。
その視線の強さに、彼女は一瞬で口ごもった。
「――とにかく、お断りします。別の方を誘ってください」
そう言って、頭を下げると、あたしは帰り支度を簡単に済ませ、会社を後にした。
朝日さんは、緊急会議のせいで滞っていた仕事を片付けているようで、部屋に帰るあたりで、メッセージが届いた。
――悪い。だいぶ遅くなる。先に寝ていろ。
端的なそれに、胸が痛い。
……あたしのせいで……。
そうは思うけれど、あたしのために頑張ってくれたんだと思うと、うれしさと申し訳無さが入り混じる。
せめて、ご飯だけでも作っておこう。
何時になるか、わからないけれど――でも、待っていたかった。
そう思うのは、やっぱり、あたしも彼が好きで――大事だという事なんだろうな。
自覚してしまえば、いつものように、彼のためにいろいろとしたくなる。
――母親のように世話をし続け、振られるパターン。
でも――朝日さんは、違うと言ってくれた。
昔の傷は癒えないけれど、新しい関係を築けるのなら、このままのあたしで良いのかもしれない……そう思えた。
すべて――楽しみにしている、との事で、あたしは、放心状態になりかけてしまった。
まさか、自分がそんな風に言われるなんて。
「あ、白山さんー、ちょっと待って!」
ロッカールームに向かう途中、後ろから声をかけられ、振り返れば小坂主任が急ぎ足でやってくる。
「ね、あなた、週末空いてる?」
「……は?」
「この前の、ライフプレジャー社さんと、今度は飲み会しようって話になってね!金曜の夜、前の場所で七時半、予定しておいて」
「え、ち、ちょっと待ってください!」
あれよあれよという間に決められ、あたしは慌てて止める。
――冗談じゃない!誰が行くか!
それが顔に出ていたのか、小坂主任は眉を寄せた。
「あのね、先方は取引先でしょ。特に、あなたは、直接お世話になってるんだし。企画が上手くいってるのは、あちらの人のおかげでしょう。お礼くらいしましょうよ」
でも、それは接待というものじゃ……。
そう感じてしまうが、主任は取り繕うように言った。
「嫌ね、接待とかじゃないわよ。お互いに、プライベートで会いましょうってだけ」
「じゃあ、あたしは無理です」
会社がらみでしか、そんなものには行きたくない。
それだって、できるだけ避けたいのに。
あたしは、頭を下げると、ロッカールームに入る。
けれど、主任はあきらめてはくれなかった。
「お願い!ホラ、向こうの高根さんも参加するっていうのよ。あなた、いてくれないと困るのよね」
「――それこそ、あたしが困ります」
先日の、だまし討ちのような合コンの事を、暗に言う。
「何で?この前の彼氏、別れたんでしょ?」
「――……別の人がいますので」
あたしの返しに、主任は目を丸くする。
「……え、あなた、よく、そんなに次から次へと男が寄って来るわね!ホント、コツでも教えてもらいたいわ!」
――この人は、単純に、思った事が口から出てくるタイプだ。
そうは思っていても、腹の底から湧き出てくる怒りを抑えられない。
あたしは、主任を見下ろす。
その視線の強さに、彼女は一瞬で口ごもった。
「――とにかく、お断りします。別の方を誘ってください」
そう言って、頭を下げると、あたしは帰り支度を簡単に済ませ、会社を後にした。
朝日さんは、緊急会議のせいで滞っていた仕事を片付けているようで、部屋に帰るあたりで、メッセージが届いた。
――悪い。だいぶ遅くなる。先に寝ていろ。
端的なそれに、胸が痛い。
……あたしのせいで……。
そうは思うけれど、あたしのために頑張ってくれたんだと思うと、うれしさと申し訳無さが入り混じる。
せめて、ご飯だけでも作っておこう。
何時になるか、わからないけれど――でも、待っていたかった。
そう思うのは、やっぱり、あたしも彼が好きで――大事だという事なんだろうな。
自覚してしまえば、いつものように、彼のためにいろいろとしたくなる。
――母親のように世話をし続け、振られるパターン。
でも――朝日さんは、違うと言ってくれた。
昔の傷は癒えないけれど、新しい関係を築けるのなら、このままのあたしで良いのかもしれない……そう思えた。